スーパーコピー時計

MB&Fは20周年を記念して、このアイデアを過去10年の傑作ともいえるふたつのモデルで復活させた。

2009年、MB&Fが初めてレガシー・マシンの開発を始めたときの最初のアイデアは、LM1に長くて彫刻的なデザインの(“ホーン”と呼ばれる)ラグを使うことだった。しかしストラップをケースに近い位置にするか、それともラグの先端にするか、どちらがしっくりくるのかが決まらず、結局そのまま計画はストップしてしまった。そのあとこのアイデアが再び動き出したのは2021年のこと。LM1の10周年を記念して、スティールケースとブラックダイヤルのプロトタイプが製作され、ラグには2つの穴を設けることでストラップのフィット感を調整できる仕様になった。この時計は同年に行われたフィリップスオークションにて27万7200スイスフラン(当時の相場で約3330万円)という価格で落札され、収益の多くが非営利団体のセーブ・ザ・ライノ・インターナショナルへ寄付された。

MB&Fは20周年を記念してスーパーコピーn級品 代引き、このアイデアを過去10年の傑作ともいえるふたつのモデルで復活させた。それが、2015年にスティーブン・マクドネル(Stephen McDonnell)氏が開発したLM パーペチュアルと、2024年に同じくマクドネル氏が手がけたLM シーケンシャル フライバックだ。どちらのモデルも驚くほど立体的で彫刻的なムーブメントを持ち、SS製ケースに収められている。サイズは共に44mmで、LMパーペチュアルは厚さ17.5mm、シーケンシャル フライバックは18.2mmと、厚さが少し異なる。

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ダイヤルプレートはロジウム仕上げで、ほかのパーツと同じく金属の質感を生かしたデザインになっている。ただしブラックラッカー仕上げのインダイヤルとブルースティールの針がアクセントとなり、全体的に少し違った表情を加えている。ブランドによると、このブラックラッカー仕上げは特に難しく、ほんの少しのホコリでもすべてが台無しになってしまうほど、繊細な作業が必要だそうだ。

この時計はとても印象的だが、名前の由来になっている“ロングホーン”ラグも同じくらい目を引くポイントだ。その違いを完全に言葉で伝えるのは難しいが、実際に見ると以前の記事で撮影したモデルとは明らかに違いがあるのが分かる。比較写真も下に載せているので、ぜひ確認して欲しい。さらにこのラグは、ストラップを取り付ける穴の位置を変えることで、手首の大きさに合わせてフィット感を調整できるようになっている。細い手首でも太い手首でも、快適につけられる工夫がされているのだ。
ムーブメントは相変わらずクールで、仕上げも見事だ。手仕上げによる面取りの角や磨き上げられた見返しリング、コート・ド・ジュネーブ装飾、手彫りのエングレービングなど、細部までこだわりが詰まっている。しかもこのクオリティが、限定生産の40本それぞれにしっかり反映されているのも驚きだ。今回のモデルはブランドの20周年を記念して、それぞれ20本ずつの限定生産だ。価格はどちらも同じで、税別16万8000スイスフラン(日本円で約2890万円)となっている。
我々の考え
スイス時計業界では、今年はいろいろな記念が重なる特別な年だと言われていた。そしてMB&Fの20周年は、ヴァシュロンの270周年にはさすがにおよばないものの、とても力強いスタートを切ったのは間違いない。さらにこれがまだ序章に過ぎないという話も出ていて、これからどんな展開が待っているのか、期待が高まるばかりだ。
このケースの形状を見た瞬間に、これは好きだと思った。最初に頭に浮かんだのは、ヴォーシェ社(Vichet)製ケースを使ったパテック フィリップのRef.2497 “フラートン”や、ちょっと変わった2497/2498、2498のデザインだ。どれも長いラグが特徴で、滑らかな傾斜を描くフォルムがとても印象的だ(もしピンと来ないなら、関連の記事をチェックしてみて欲しい)。“もしMB&Fがヴォーシェ製ケースだったら、こんな感じになるんだろう。すごくカッコいいじゃないか”と直感的に思えた時点で、これは間違いなく成功だと思う。実際にその感想をそのままマックス・ブッサー(Max Büsser)氏にメッセージで送ったくらいだ。こういう細かい部分にこだわるところが、マックス氏と彼のチームらしいと思う。
MB&Fにラグからラグまでの長さを教えてもらえないか聞いたところ、なんと親切にも改めて測ってくれた。クラシックなケースは全長50.37mm、新しいロングホーンは53.99mmで、3.5mm以上長くなっている。ただ数字だけではなく、ラグの傾きや手首へのフィット感も影響するため一概に長いとは言い切れない。いつか実物を試せる機会があれば、細腕の同僚タンタンと一緒に、自分たちの手首にどんな風にフィットするのか試してみたい。確かに写真ではモデルの手首からラグが少し飛び出しているが、MB&Fがつけにくい時計をつくるとは考えられない。
MB&Fでどれを選ぶか考えるとき、いつもEVOケースにするかスタンダードケースにするかで悩んでしまう。パーペチュアルは厚さ17.5mm、シーケンシャル フライバックは18.2mmと結構厚みがあるが、幅44mmのサイズ感にしては意外とつけやすい。EVOケースは防水性や耐衝撃性が高くて実用的ではあるものの、カラーダイヤルプレートにブラックのインダイヤルが少し浮いて見えるのが気になっていた。それにラッカー仕上げではないブラックダイヤルは、奥行きが足りない感じがする。正直、ブラックラッカーダイヤルがホワイトよりもはるかに難しい仕上げだとは考えたこともなかった。今回のモデルのように全体をシンプルなワントーンでまとめたデザインは、自分にとってほぼ完璧と言える仕上がりだと思う。
基本情報
ブランド: MB&F
モデル名: LM パーペチュアル(LM Perpetual)/LM シーケンシャル フライバック(LM Sequential Flyback)

直径: 44mm(LM パーペチュアル)/44mm(LM シーケンシャル フライバック)
厚さ: 17.5mm(LM パーペチュアル)、18.2mm(LM シーケンシャル フライバック)
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: 光沢のあるブラックラッカー、ロジウムメッキのベースプレート
インデックス: ホワイトインデックス、ブルースティール針
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: カーフレザーストラップ、SS製フォールディングバックル
LM パーペチュアル “ロングホーン”
LM シーケンシャル フライバック “ロングホーン”
ムーブメント情報
キャリバー: スティーブン・マクドネルがMB&Fのために開発した完全一体型永久カレンダー(LM パーペチュアル)、スティーブン・マクドネルがMB&Fのために開発した完全一体型デュアルクロノグラフフライバックシステム(LM シーケンシャル フライバック)
機能: 時・分表示、曜日表示、日付・月・うるう年表示、パワーリザーブインジケーター(LM パーペチュアル)/時・分表示、ふたつの独立したクロノグラフ、フライバック機能付き“ツインバーター”(LM シーケンシャル フライバック)
パワーリザーブ: 約72時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 1万8000振動/時(LM パーペチュアル)/2万1600振動/時(LM シーケンシャル フライバック)
石数: 41(LM パーペチュアル)/63(LM シーケンシャル フライバック)
クロノメーター: なし
追加情報: サファイアクリスタル(表面および裏蓋)は両面反射防止コーティン

時計広告に隠された巧妙な販売戦略

腕時計の広告、さらには最近の腕時計写真全般で最も顕著な特徴のひとつが時・分針の位置である。それが手ごろなスウォッチであろうと、最高級のパテック フィリップであろうと関係ない。針は例外なく10時10分、もしくはそれに近い位置にセットされている。そして驚くべきことに、この配置にはあなたがその時計を買いたくなるよう誘導する仕掛けが隠されているかもしれないのだ。


この隠されたメッセージの背後にあるのが“パレイドリア(pareidolia)”という現象である。これはギリシャ語に由来する言葉だ(特筆すべき用語はたいていギリシャ語が起源だ)。パラ(para)は“近しい”や“代わりに”という意味があり、エイドロン(eidolon)は“イメージ”や“形”を指す。この言葉は人間の心(おそらくその他の動物の心も)が、視覚的なイメージのなかに意味のあるパターンを見出そうとする傾向を表している。そうやって認識したパターンには実際に意味がある場合もあれば、特になく思い過ごしである場合もある。具体例を挙げるなら、雲を見つめているうちに顔や家畜の形が見えてくるうようなものだ。また、過去に火星の表面で観測された“運河”も思い浮かぶ。これもパレイドリアの典型例だ。火星にはこの現象を刺激する要素が豊富なようで、以前話題になっていた“火星の顔”もその一例だろう。

バイキング・オービターが1976年に撮影した“火星の顔”(写真中央上)。

2001年にマーズ・リコネッサンス・オービターによって再撮影された同じ地形(2007年公開)。
パレイドリアがなければ絵文字はうまく機能しなかった、あるいは少なくとも今ほど便利には使われなかっただろう。たとえば、?という絵文字について考えてみてほしい。私たちはこれをごく自然に、そして瞬時に“困惑”や“軽度の悲しみ”、“失望”を表現する顔として解釈する。この解釈は本能的すぎて、脳が実際にはどれほど少ない情報でそれを行っているかを意識するのが難しいほどだ。この絵文字には塗りつぶされた円が描かれている。しかし冷静に考えると、この幾何学的な円は人間の頭の実際の形とほとんど共通点がない。もしこの両者がイコールなら、コンパスさえあれば誰でもレオナルド・ダ・ヴィンチになれるはずだ。そこにふたつの点と左右非対称にカーブした1本の線が描かれているだけで、それ以上の情報はない。
 絵文字や少しでも“顔らしい”ものを目にしたときに起こるのは、顔認識に特化した脳の一部が活性化するという現象だ。この領域は“紡錘状回顔領域(fusiform facial area)”と呼ばれ、脳の下部後方(側頭葉の腹側面)に位置する(神経解剖学に興味のある人ならおなじみだろう)。興味深いことにこの紡錘状回顔領域は、実際の顔よりも絵文字のような単純な形状に対して素早い反応を見せるようだ。この現象は進化の過程で、人間がごくわずかな情報から表情を読み取り、感情を判断する能力を発達させた結果だと考えられている。

ロレックス オイスターの広告(1927年)。針が10時17分に設定された例だ。Image, Rolex.org
腕時計広告における針の設定が“10時10分”と関係する理由は一体何なのだろうか? 話はここからさらに深まる。2008年、ニューヨーク・タイムズでアダム・アンドリュー・ニューマン(Adam Andrew Newman)氏が同テーマについて執筆した記事で、この慣習が普及している実態について触れた。当時ユリス・ナルダンのマーケティング責任者であったスザンヌ・ハーニー(Suzanne Hurney)氏は、この記事のなかで「10時10分の針の配置はスマイリーフェイス(顔文字の笑顔)のような印象を与えてくれるので、可能な限りその配置を採用するようにしている」とコメントしている。ここでも再びパレイドリア(視覚的錯覚)が登場するわけだ。また、当時タイメックスの社長だったアダム・グリアン(Adam Gurian)氏はニューヨーク・タイムズに対して「弊社では常に針を10時9分36秒に設定して撮影している。たとえその配置によって、時計の一部の機能や特徴を隠してしまったとしてもだ」と語っている。

しかしながら、認知科学的な根拠が明確に示されたのは2017年のことである。この年、心理学の専門誌『Frontiers In Psychology』が「なぜ時計広告の針は10時10分に設定されているのかという心理学的実験(Why Is 10 Past 10 the Default Setting for Clocks and Watches in Advertisements? A Psychological Experiment)」と題した研究を発表した。この研究では「10時10分に設定された時計は、観察者の感情や購入意欲に対し顕著にポジティブな効果をもたらした。しかし8時20分に設定された時計は、感情や購入意欲に何の影響も与えなかった。また10時10分に設定された時計は、男性よりも女性において、より強い“喜び”の感情を引き出した」との結果が示された。
検証の方法はシンプルである。研究者たちは20種類の時計をそれぞれ10時10分、11時30分、8時20分に設定して撮影し、計60枚の写真を作成した。この写真を最初の実験では男性20人、女性26人、2回目の実験で男性11人、女性12人に見せた。その結果10時10分の配置がほかのふたつの設定よりも最も高い“喜び”の感情を引き起こすことがわかった。また10時10分は唯一、笑顔に見える配置として認識された。

検証の際に使用された時計の画像。ブラッドリー・ラング自己評価マネキンと対応。『Frontiers In Psychology』より。
正確を期すために補足すると、ジェームズ・ステイシーが指摘していた興味深い事実がある。それは時計の針を“10時10分”に設定すると口では言うものの、実際には針が“10時8分”から“10時10分”のあいだに設定されていることが多いという点だ。これは分針の先端がちょうどインデックスの上に来ると分針の先端が見えにくくなるうえ、微妙な非対称性が生じてスマイリーフェイス効果を損なう可能性があるためである。
10時10分の配置は時計を購入する際の抵抗感を減らす効果があるものの、この小規模な実験ではその配置だけで実際に購入を決断させるほどの強い効果は見られなかった。ただし競争の激しいアナログウォッチの販売市場では、どんな小さな優位性も活用する価値があるだろう。研究論文にはこう記されている。「この研究は、10時10分のようなスマイリーフェイスに見える時刻設定を用いることで、観察者の感情的な反応や時計の評価にポジティブな影響を与えられるという事実を初めて実証的に証明した。ただし観察者は、時刻設定がこの効果を引き起こしていることに気付いていない」

時計広告で針を10時10分に設定する習慣が一般的になり始めたのは、1950年代以降のことである。それ以前の広告では、時刻設定はもっと雑然としていたようだ。たとえば1927年のロレックスの広告(メルセデス・グライツのイングランド海峡横断泳を題材にしたもの)では、時計の針が10時17分に設定されている。この時代にも10時10分の設定が使われることはあったが、現在ほど広く普及していたわけではない。また“8時20分”という配置も人気の選択肢だった。これは少し不機嫌そうな顔に見えるものの、時計が贅沢品ではなく必需品だった時代には“時を刻むことは真剣な行為である”という印象を与えるのに役立っていたのかもしれない。さらにこの位置では、針がブランドロゴを隠さないという実用的な利点もあった。

デジタルウォッチについてはどうだろう? 網羅的な調査をしたわけではないが、驚くべきことにタイメックスのデジタルウォッチもアナログと同じく“10時9分36秒”に設定されている。一方、カシオのG-SHOCKはデジタルディスプレイの時刻が一律で“10時58分50秒”に設定されており、日付は常に“6月30日 日曜日”だ。アナログとデジタルが組み合わさったアナデジモデルでも日付は同じく6月30日だが、針の時刻は“10時9分36秒”に設定されている。この点ではタイメックスとの差別化が図られているといえる。

なぜ6月30日なのか? 最初はまったく見当がつかなかった。もちろん、6月30日にはいろいろな出来事が起きている。グレゴリオ暦が採用された1582年以降6月30日は実に440回存在しているし、ツングースカ大爆発のおかげで“国際小惑星デー”にも指定されている。しかしこの記事を公開する前に同僚のマイルズ・クサバが指摘してくれたのは、1957年6月がカシオ計算機株式会社の設立月であり、その年の6月30日は日曜日だったということだ。現在カシオに事実確認中だが(記事執筆当時)、ひとまずこの説で間違いないといえるだろう。Q.E.D.(証明終了)。

シリーズ第2弾となるデザインは、150本限定の特別仕様として鮮やかなカラーを採用した。

ニバダ グレンヒェンが2023年にアンタークティック ダイバーを発表して以来、そのラインナップは一貫して変わらず、ヴィンテージにインスパイアされたブラックダイヤルがスキンダイバーシリーズの唯一のSKUとして君臨していた。しかし同ブランドの動向を追っているならば、創業者のギヨーム・ライデ(Guillaume Laidet)氏が常にアーカイブやウェブサイト、さらには個人コレクションを探索し、ブランドの歴史的オマージュや復刻のインスピレーションを探し続けていることを知っているだろう。今回ギヨーム氏が参考にしたのは、ヴィンテージウォッチショップで見つけた1970年代のニバダ アンタークティック シーだ。オリジナルはよりユニークなクッションケースを採用していたが、そのエメラルドグリーンのダイヤルは現代版アンタークティック ダイバーのプラットフォームに受け継がれ、新たな限定モデルとして登場することとなった。

今回は、すべてがダイヤルに集約されている。とても鮮やかなグリーンであり、その彩度の高さによって暗い環境でも色が損なわれることはない。サンバースト仕上げが際立ち、明るい光の下ではダイヤルのメタリックな質感が、はっきりと見て取れる。この仕上げの強調により、暗い場所でもダイヤルは単調になることなく明暗のコントラストが生まれ、常に表情を変え続ける。正直に言うと、このカラーリングはチープに見えてしまうのではないかと心配していたが、実物を手に取るとその仕上がりは期待以上に印象的だった。


ダイヤル周囲には、プリントされたホワイトの分目盛りが配されており、その内側には大型の横長な長方形のインデックスが並ぶ。3・6・9・12時位置には厚みのあるファセット加工が施されたメタル製アプライドインデックスが採用され、それ以外の時間帯には、ブランドが“クリームラテカラーのパティーナ”と称する夜光インデックスが配置されている。だが実際に見るとコーヒーのような色味はなく、むしろグリーンイエローに近い印象を受ける。それでもすべてのインデックスは分厚くワイドに設計されており、このデザイン特有のユニークなプロポーションに貢献している。

これらのインデックスを引き立てるのはきわめてワイドな針だ。私がこれまで見たなかでも最も幅広い針であり、小振りな38mm径のケース内でその存在感が一層際立っている。時・分針は四辺が面取りされているものの、中央部分にはファセット加工が施されておらず、そのためダイヤル上での視認性が非常に高い。オリジナルのヴィンテージモデルから受け継がれたデザインとしては適切な選択だが、もしケースがラウンド型のクッションケースだったならば、このブロック状の針とのバランスがさらによくなったのではないかとも思う。ちなみに、これらの針は現行のアンタークティック ダイバーの標準的なブラックダイヤルモデルにも採用されている。しかし、今回のモデルでは長方形のインデックスと組み合わさることで、そのデザインがより効果的に機能しているように感じられた。


ヴィンテージからのインスピレーションはこれだけにとどまらず、オリジナルのタイポグラフィもこの現代版に受け継がれている。ニバダ グレンヒェンのブランドロゴ上に配置されたアイコンは、ヴィンテージのカタログリストに掲載されていたデザインを踏襲しており、6時位置の上には筆記体でAntarctic-Diver(南極ダイバー)とプリントされている。今回、自分が手に取ったのはノンデイト仕様だったが、ギヨーム氏はよりオリジナルに忠実なフレーム付きの日付表示モデルも展開している。ブラックダイヤルとは異なりこのモデルには、幸いにもサイクロップスレンズが付いていない。

それ以外の点は、基本的に標準モデルのアンタークティック ダイバーと同じだ。ステンレススティール製のケースは直径38mm、厚さ12.9mmで、ケースサイドはポリッシュ仕上げ、トップとボトムはヘアライン仕上げとなっている。ニバダの多くのモデルはエッジがシャープで明確なラインを持つことが多いが、このモデルはケースのトップからサイドへの移行がより滑らかで、人によってはややポリッシュが強すぎると感じるかもしれない。一方でCNC加工直後のような無機質な印象はなく、適度な仕上がりにまとまっている。ベゼルにはセラミックを採用し、この価格帯で一般的なアルミニウム製よりも高級感のある仕上がりだ。ベゼルは圧接式で、クリック機構のない双方向回転式。適度な抵抗があり、しっかりと固定されている。しかしこの時計を本格的なダイビングツールとして使用する人は、実際にはほとんどいないだろう。

この時計の全体的なサイズ感は非常に装着しやすく、200mの防水性能を備えた実用的なダイバーズウォッチとなっている。さらにトロピックラバーストラップが手首にしっかりとフィットし、快適なつけ心地を実現している。ムーブメントにはニバダの標準仕様であるソプロード製PO24キャリバーを搭載し、パワーリザーブは約38時間。ノンデイト仕様だと、ゴーストデイトポジションが生じる点は理想的と言えない。裏返すとペンギンの刻印が施されたデザインが現れる。こんな楽しいデザインなら文句はない。

今回のアンタークティック ダイバーは150本限定で、ノンデイト仕様とデイト表示付きモデルがそれぞれ75本ずつ製造される。販売価格は標準モデルと同じ995ドル(日本円で約15万円)に据え置かれており、グリーンダイヤルは限定モデルとしての個性を際立たせるユニークなカラーバリエーションとなっている。これが画期的かつ革新的なモデルかと言われれば、答えはノーだ。しかしニバダが手がけたハイパースタイライズドなデザインと鮮やかな発色は、定番とはひと味違うモデルを求める人にとってよい選択肢となるだろう。
ニバダ グレンヒェン アンタークティック ダイバー グリーン。ステンレススティールケース、直径38mm、厚さ12.9mm。ノンデイト仕様とデイト表示付きのグリーンダイヤル、ダブルドーム型サファイアクリスタル、両方向回転式セラミックベゼル、200m防水。ソプロード製自動巻きCal.PO24搭載。ストラップやブレスレットのバリエーションあり。価格は995ドル~(日本円で約15万円~)。

セカンドキャリアとして船舶時計の修理職をみいだした、元ポートキャプテンを紹介しよう。

「もう75歳になります。いつの間にか、こんなに歳をとってしまいました」と、デビッド・トンプソン(David Thompson)氏は語る。正確な時刻にこだわる時計修理の仕事をしている彼にとって、この言葉はどこか皮肉めいている。「腕時計はつけないし、普段は時間を気にしない。でも、なぜか時計が好きなんです」。ただしトンプソン氏は、いわゆる一般的な時計職人とは一線を画している。彼の専門はチェルシー社製の船舶時計、とりわけ北米五大湖を航行する巨大貨物船の操舵室や機関室で今も時を刻むものだ。この仕事に就いたのはわずか5年前だというが、まるで長い年月従事してきたかのように見える。

スタージョン ベイの造船所にいる冬の船団。
トンプソン氏は水辺と船に囲まれて育った。子どものころはオンタリオ州キングストンに住み、セントローレンス川からオンタリオ湖へ入ってくる船の写真を撮っていた。10代のころには海洋少年団に所属し、ブリガンティン帆船の建造を手伝った。また、地元の造船所で建造された軍用揚陸艦が川をさかのぼってモントリオール港へ運ばれる際、その船に便乗する機会もあった。1970年代初頭、彼はウィスコンシン州ドア郡へ移住する。そこではベイ造船所が五大湖初の1000フィート級“スーパーレイカー(超大型湖船)”の建造を進めていた。1978年の冬にトンプソン氏はそのうちの1隻の塗装作業を請け負い、氷結した造船所の上に立ち、20フィートの延長ポールを使ってUSスチール社の新造鉄鋼運搬船“エドウィン・H・ゴット”の巨大な船体に何百ガロンもの塗料を塗り上げた。
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長年にわたる船との関わりが、彼を最終的にウィスコンシン州ドア半島の小さな港町、スタージョン ベイでの船舶管理の仕事へと導いた。冬の氷で航路が閉ざされると、五大湖の航行は一時的に停止し、船はドックや造船所で数カ月間係留される。常勤の乗組員はそれぞれの家へと帰り、一時的に船を離れる。この季節の小休止のあいだに船主は推進機や甲板機械の改修作業を実施し、乾ドック(編注;船体の検査や修理などのために水を抜くことができるドックのこと)での船体検査を行い、船首から船尾までの保守点検を行う。
船舶管理人として、そしてのちに“ポートキャプテン”として、トンプソン氏は冬季のあいだに係留される最大5隻の五大湖船(そのなかにはエドモンド・フィッツジェラルド号が沈没した悲劇の夜にスペリオル湖をともに航行していた、アーサー・M・アンダーソン号も含まれる)の実質的な船長としての役割を果たした。彼の職務は、配管の緊急対応から乾ドックでの検査監督まで多岐にわたる。そのなかには、船舶時計の年次メンテナンスや修理業務も含まれていた。生粋の船好きであるトンプソン氏はチェルシー社製船舶時計の歴史にすぐに魅了され、冬の作業リストのなかでもこの特別な業務に強い関心を抱くようになった。

「船が入港するたびに船長のもとを訪れ、どの時計がいくつあり、どれが修理を必要としているのかを確認し、それらをスタージョン ベイの宝石店に持ち込んで修理してもらっていました」。トンプソン氏はそう振り返る。彼は時計を船団事務所に送るとその多くが戻らず、退職する幹部への贈り物として消えてしまうことに最初のシーズンで気づいた。幸運なことにスタージョン ベイにあるドレーブ・ジュエラーズは1910年創業の家族経営の店で、時計修理を専門としていた。こうしてドレーブは、冬に入港する船舶の数十個におよぶ時計のメンテナンスを支えるトンプソン氏の頼れる協力者となった。

チェルシー社製の船舶時計には、極端な温度差、埃、湿気、機関室や操舵室の振動といった過酷な環境にも耐えうる頑丈さが求められた。
 過去30年間で五大湖の航運業は大きく変わり、米国の船団は1950年代や60年代の最盛期と比べてすっかりその姿を変えてしまった。当時は銑鋼一貫製鉄の原材料需要に支えられ、何百隻もの船がスペリオル湖のアイアン・レンジからシカゴやデトロイト周辺の製鉄所へと航行し、一方で穀物はオンタリオ湖やセントローレンス海路を通ってヨーロッパへ輸出されていた。造船業は活況を呈し、世代を経るごとに船は大型化していった。しかしその後の船舶の大型化、1960年代以降に始まった安価な外国鋼材の流入、さらに陸上輸送との競争の激化により、業界は大きく衰退した。今日では、ダルースやマーケットの鉱石ドックで貨物を積み込む五大湖船を1隻でも見かけることができれば幸運なほどである。またかつて船の航行には海洋クロノメーターが不可欠だったが、それもロランC(長距離電波航法)、さらにGPSへと取って代わられた。船の4時間ごとの当直交代をチェルシー社製の時計で知らせる必要もなくなったが、それでもこの伝統的な時計は今もなお船内に残り、1隻あたり5~6個が搭載されている。

ポートキャプテンとしての任務を退いた後、トンプソン氏はいわゆる“HITマン”、つまり時計師の訓練生(Horologist In Training)になった。
 五大湖の航行はこの数十年で劇的に近代化されたが、船員たちはいくつかの伝統を今も大切にしている。実用面では、電話やデジタルクォーツウォッチ、コンピュータ化された航行装置が時刻を知らせ、機器の自動制御を担っている。それにもかかわらずこれらの機械式時計が船内に残っているのは、そうした伝統が根強く息づいているためだ。今もなお多くの五大湖船では、同期されたチェルシー社製船舶時計が機関室の制御ステーションや操舵室、調理室、船長や一等航海士の居室、さらにはゲストラウンジやダイニングルームに設置されている。淡水環境の穏やかな影響と毎年冬のあいだに実施される保守点検により、五大湖を航行する船舶には何十年も前に建造されたものも多く残っている(2013年に退役した由緒ある五大湖船は、1906年に進水したものだった)。現在でも、それら多くの船にはオリジナルの船舶時計が残されている。これらの時計は8日巻きの機械式ムーブメントを備え、週に1度の巻き上げで動作する。もともとは当直交代の合図として4時間ごとに鐘が鳴るように設計されていたが、現在では主に装飾的な存在となっている。しかしながら時刻を正確に示し、ひと目で視認できるうえ、機関室や操舵室の温度変化、埃、湿気、振動といった過酷な環境にも耐えうる頑丈さを誇っている。
 チェルシー・クロック・カンパニーは、アメリカの航海発祥の地ともいえるボストン港の近くで創業し、その歴史は1800年代後半にまでさかのぼる。20世紀初頭には、米国政府が海軍艦艇用に同社の時計を発注していた。バード(Byrd)提督は1936年の南極探検でチェルシーの時計を使用し、第2次世界大戦中には大西洋戦域と太平洋戦域の軍艦向けに数千個が製造された。ホワイトハウスのマントルピース(暖炉の飾り棚)にもチェルシーの時計が飾られており、歴代の要人や国家元首にも贈られてきた。時計業界では“アメリカンメイド”という言葉がしばしば強調されるが、チェルシーはそのなかで見落とされがちな存在である。これは惜しまれることだ。あらゆる意味において、この純粋な国産企業は“アメリカの世紀”を正確に刻んできたのである。

パテック フィリップよりカラトラバ Ref.6196P-001、プラチナでアップデートした最新作。

パテック フィリップは最もクラシックで(敢えて言おう)アイコニックな時計をアップデートした。2021年に発表されたRef.6119で初採用された、ケースいっぱいに収まるCal.30-255 PSを搭載して待望のリフレッシュとなったのがこのRef.6196P-001である。時刻表示のみのパテックファンにとっては4年越しの新作であり、その待ち時間は十分に報われたと言える。

6196はクラシカルなスタイルを持つ手巻きのプラチナ製ドレスウォッチである。パテックのリファレンスナンバーを読み解ける者なら、すでにお察しのことだろう。しかし、パテックのコード言語だけでは読み取れないのが、この時計に採用されたサーモンカラー風のダイヤルで、往年のパテック フィリップを想起させる仕上がりとなっている。1932年に誕生した初代Ref.96は、ブランド初のラウンド型ウォッチであり、バウハウスの“機能が形態に従う”という理念を体現した時計だ。以降このデザインは、カラトラバ コレクション、ひいては現代ドレスウォッチ全体の礎となった。6196は、その歴史に対する敬意を込めたモデルである。


パテックフィリップ コピー販売38mm径のプラチナケースはポリッシュ仕上げの表面とサテン仕上げの側面を備え、滑らかな面取りをあしらったベゼルとテーパードラグを組み合わせている。ダイヤルはローズギルト仕上げのオパラインで、温かみのある柔らかなトーンが控えめながらも奥行きを感じさせる。

6196Pに搭載されるのは、手巻き式のCal.30-255 PSである。ツインバレルによって約65時間のパワーリザーブを実現し、時刻合わせを正確に行うためのストップセコンド機構も備える。チョコレートブラウンのアリゲーターストラップとプラチナ製のバックルを組み合わせ、パテック フィリップのレギュラーコレクションに名を連ねるモデルとなった。
6196Pの販売価格は、746万円(税込)である。

我々の考え
先代のRef.5196 カラトラバに対する最大の批判は、ムーブメントが“ケースに対して小さすぎる”という点であった。そのためスモールセコンドが文字盤上で不自然な位置に配置されていた。だが今回のモデルでは、文字盤側から見てもそのような問題は一切ない。またシースルーバック越しに覗いても、粗探しをするのが難しいほどである。直径38mmのケースは、5196に搭載されていたCal.215 PSに比べ、8.9mm大きい直径を持つことで余白なく収まっており、ふたつの香箱が全体の構成を見事にまとめ上げている。仕上げに関しては言うまでもなく、パテックで常に期待される水準に達しており、ただただ見惚れるほどの美しさである。

プラチナがパテック フィリップにとって究極のケース素材であることは多くの人が知るところだ(もちろん、ステンレススティールやチタンにも異論の余地はある)。ドレスウォッチにおいては、複雑機構の有無にかかわらずプラチナ製モデルが最も人気を集める傾向にある。たとえばRef.5970Pはその代表例であり、ゴールド製の5970G、R、Jと比べて、通常10万ドル(日本円で約1500万円)以上も高いプレミアムで取引されている。


パテック フィリップは流行を追うブランドではないが、世界が再びクラシックを求める機運を的確に察知する力を持っている。6196P-001は多くのコレクターたちが長らく抱いてきた問いに、まさに絶妙なタイミングで応えた1本に感じられる。その問いとは偉大なドレスウォッチはどこへ行ったのか? あるいは、より具体的に言えば伝統的なスタイルのパテック カラトラバは、どうなってしまったのか?というものだ。


愛好家の世界では、明らかな潮流の変化が起きている。ポスト・ハイプ・コレクティングと呼ぶべきか、TikTokのマイク・ヌーヴォー(Mike Nouveau)効果とでも言うべきか、あるいはヴィンテージミニマリズムか...呼び方はどうあれ、若いコレクターたちはより控えめで歴史的背景に根ざした時計へと関心を移しつつある。たとえばヴィンテージカルティエや、そうパテックのRef.96が持つ“完璧”なプロポーションが、まさにその象徴である。

6196Pは初代96の歴史に深く結びつきながらも、現代的に仕上げられた待望のカラトラバである。パテックを知る者にとっても、ただ純粋にこれぞパテックと呼べる素晴らしいタイムオンリーモデルを求める者にとっても魅力的な時計だ。特に注目すべきは38mmというサイズ感。6119よりも1mm小さくまとめた点に、改めて称賛を送りたい。


パテックがこの美意識に立ち返ったこと自体が、ひとつの明確なメッセージである。カラトラバは常に“タイムレス”であることを追求してきた。しかしこの4年間、96の美学は姿を消しており、それはどこか間違っているように感じられた。だが今ではすべては元通りだ。パテックの世界は再び正しい姿を取り戻したのだ。

基本情報
ブランド: パテック フィリップ(Patek Philippe)
モデル名: カラトラバ(Calatrava)
型番: 6196P-001

直径: 38mm
厚さ: 9.33mm
ケース素材: プラチナ
文字盤: サーモン
インデックス: アントラサイト・ホワイトゴールド・ファセット仕上げのオビュ(弾丸)型植字アワーマーカー
夜光: なし
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: シャイニーチョコレートブラウンカラーのスクエアスケールアリゲーターレザー、プラチナ製ピンバックル付き

ムーブメント情報
キャリバー: 30-255 PS
機能: 時・分表示、スモールセコンド
直径: 31mm
厚さ: 2.55mm
パワーリザーブ: 最小65時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27
追加情報: ジャイロマックステンプ、スピロマックス®・ヒゲゼンマイ、パテック フィリップ・シール取得

歴史的に重要なロレックス ディープシー・スペシャル、ドレダイヤルのパテック フィリップ 永久カレンダー

今回はさらに充実した内容となっている。Bring A Loupeを待っていたという読者も多いだろう。あえてコメントで知らせてもらう必要はない。コメント欄があふれてしまっても困るからだ。
 さて、前回の特集で取り上げた時計の結果について触れておこう。正直なところ、あまり大きな反響はなかった。ガス・グリソムのオメガ スピードマスターは依然として41万5000ドル(日本円で約6200万円)で販売中であり、ニール・アームストロングの個体はRRオークションにて136万6694ドル(日本円で約1億9500万円)に達している。エテルナ スーパーコンチキはeBayにて3900ドル(日本円で約55万7000円)で再出品された。もっとも手の届きやすい選択肢であったタイタス カリプソマチックは、500ドル(日本円で約7万円)未満のオファー価格で売却された。
 それでは、今回も注目モデルを紹介していこう。

ロレックス ディープシー・スペシャル No.35、1966年製

 我らがBring A Loupeでは初めてのことだと思うが独占発表がある(4月11日HODINKEE本国版掲載当時)。ロンドンでロレックス ディープシー・スペシャル No.35が売りに出されるのだ。
 ロレックス ディープシー・スペシャルとは、ロレックスによる初の試作・実験的な深海潜水用時計の名称である。正式な製品名というわけではない。シードゥエラーやディープシーといったモデルの起点は、このディープシー・スペシャル・プロジェクトにある。もちろんこの時計はオイスターケースに大きく依拠しているが、これは潜水艇の外側に装着するために設計された実験機であることをまず強調しておきたい。サイズは非常に大きく、腕時計コレクションの空きを埋めるような存在ではない。むしろロレックスの歴史を物語るひとつの証として捉えるべきものである。「これは博物館にあるべきだ」という、インディ・ジョーンズ的な思いが浮かんでも不思議ではない。だが安心して欲しい。この時計の実物は、スミソニアン博物館やチューリッヒのベイヤー博物館といった施設で実際に展示されている。

 ロレックスは1950年代から1960年代にかけて、複数のバージョンのディープシー・スペシャルを製造した。本プロジェクトが成果を収めたのは1960年1月23日。この日、ディープシー・スペシャルが地球の最深部、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵(1万916m)の海底に到達した。このとき、時計はバチスカーフ“トリエステ”号の外部に取り付けられていた。同艇にはスイスの海洋学者であるジャック・ピカールと、アメリカ海軍中尉のドン・ウォルシュが搭乗していた。
 この1960年の記録的な潜航の前には、1953年と1956年にトリエステ号による“試験潜航”が2回行われており、いずれの航海にもディープシー・スペシャルが搭載されていた。ロレックスはそれぞれの潜航後に設計をわずかに変更しており、最終的には3つのバージョンが存在することとなった。1960年の潜航は、その最終形として位置づけられる。

 トリエステ号の成功および実際に使用されたディープシー・スペシャルの偉業を受け、ロレックスはその成果を世に広めたいと考えた。これを記念して、マリアナ海溝到達モデルとまったく同じ仕様で製作された記念モデルのディープシー・スペシャルが少数製造された。総製造数についてロレックスが公式に発表したことはなく、正確な数は不明である。ただし、ロレックスが所有する“No.47”の個体が存在することは確認されている。いずれにせよ、製造数が2桁というのは、ロレックスにとっては極めてまれなケースである。
 この記念モデルは一般的に小売販売されることはなかったとされており、1960年代半ばから後半にかけて、世界中の博物館や有力なロレックス正規販売店に寄贈されたと考えられている。

私の手首の上で。
 今回販売される個体は来歴が確認されており、市場でも真正品として認められている。ドイツ・ヴッパータールのヴッパータール時計博物館が所有していたもので、“No.35”と刻まれている。これまでに2度オークションに出品されており、直近では2021年にフィリップスを通じて出品され、105万8500スイスフラン(当時のレートで約1億2700万円)で落札された。手首につければ圧倒的な存在感を放つが、これはロレックスの歴史を象徴する一本である。もし実際にトリエステ号に装着された3本のディープシー・スペシャルが“アポロ計画で宇宙飛行に使用されたスピードマスター”と同様の存在であるならば、今回のような記念モデルは前回紹介したガス・グリソム所有の金無垢スピードマスターに相当するものと言えるだろう。
 販売はMaunder Watchesのエイドリアン、オスカー、そしてそのチームによって行われ、価格は“応相談”となっている。詳細はMaunderの公式ウェブサイトを確認して欲しい。

パテック フィリップ Ref.3940J “ドレ”ダイヤル、1989年製

もしパテック フィリップにおける“究極の時計(グレイル)”リストを個人的に作成するならば、ステンレススティール製のRef.1518など、その他極めて素晴らしいアイテムを挙げることになると思う。とはいえもっとも現実的な“グレイル”は、おそらくこのドレダイヤルのRef.3940J、特に今回紹介する“No.10”、チューリッヒのべイヤーのために製作された個体だろう。まあ、No.10以外を選んでも十分に満足できるはずだ。
 ミシガン州デトロイトにある比較的小規模な遺産専門のオークションハウスを通じて市場に姿を現したこのRef.3940は、シャンパンカラーのダイヤル、すなわち“ドレ”ダイヤルを備えている。これは当時のパテック フィリップのオリジナル証明書にも記されていた正式な表記であり、イエローゴールドケースのパテック フィリップ製永久カレンダーモデルに通常見られるシルバーまたは“ホワイト”ダイヤルのモデルに比べてはるかに希少性の高い仕様である。Ref.3940に関しては製造年が古ければ古いほど価値が高いとされており、このシャンパンカラーのダイヤルは製造初期の第1および第2世代に集中して存在するため、収集価値もいっそう高まっている。こうしたダイヤルは、初期の製造ロットやベイヤーが販売した初期個体に見られるものだが、はっきり言ってこの“ドレ”カラーこそが、Ref.3940Jのケースにもっともよく調和するトーンであると確信している。私自身はゴールド系のダイヤルをあまり好まないが、このリファレンスに関しては例外である。

 今回紹介するこの個体は、オークションに出品された背景から見て、初代オーナーもしくは長年の所有者による委託であると推察される。ミシガン州ブルームフィールドヒルズ在住の個人コレクションから出てきたもので、出品者は初期のアクアノート Ref.5066も同時に出品しており、審美眼の光る2本を所有していたことがうかがえる。オークションページの記載によれば、本品はオリジナルのボックス(内側の剥がれあるが、これはよく見られる状態)と書類がそろったフルセットである。特筆すべき点として、ケース左側(9時位置側)の側面に刻まれたふたつのホールマークがある。これらは初期製造の個体に固有の特徴であり、ポリッシュされる過程で消失してしまっている場合が多い。このような状態のホールマークが残っている点は非常に重要である。なお、同様にボックスと書類が付属しながらも、ホールマークがポリッシュによって消えていた個体が2022年11月にA Collected Manを通じて10万5000ポンド(当時のレートで約1750万円)で販売された記録がある。

 このパテック フィリップ Ref.3940Jは、DuMouchelle’sによって2025年4月に開催されるDay Oneオークションのロット1番として出品される予定である。開催日時は4月17日(木)午後11時(米東部時間、日本では4月18日午後1時)。エスティメートは2万〜3万ドル(日本円で約285万〜428万円)とされている。出品ページはこちらから確認できる。

IWC ドッペルクロノ Ref.3711 箱・書類付き、1996年製

 これは、HODINKEEでも長年にわたり愛されてきたモデルである。1990年代初頭、IWCはドッペルクロノグラフ Ref.3711を発表した。このモデルはスプリットセコンド・クロノグラフの概念を再定義する先駆的なタイムピースであった。ギュンター・ブリュームラインの指揮のもと、リヒャルト・ハブリングの技術力によって、IWCはバルジュー7750をベースに堅牢かつ扱いやすいラトラパンテ機構を開発した。この革新的なメカニズムでは、従来のコラムホイールではなくカムによってクロノグラフおよびスプリットセコンドの制御を行っている。これにより、高精度を保ちながらも耐久性があり量産可能で、かつ高級機ほど価格が跳ね上がらない実用的なコンプリケーションが誕生したのだ。そして(私にとっても)朗報だが、経年とともにコレクターズアイテムとなってはいるものの、中古市場では依然として非常に手の届きやすい存在であり続けている。

 Ref.3711のデザインは、IWCの傑作パイロットウォッチであるマーク11に着想を得ている。42mm径のステンレススティール製ケース、ドーム型サファイアクリスタル、そして耐磁性を確保するための軟鉄製インナーケースを備えている。現在では広く認識されているIWCの“フリーガー”スタイルだが、このRef.3711とその商業的成功がアイコニックなデザイン言語の確立に大きく貢献したのは間違いない。スプリットセコンド・クロノグラフでありながら、実用性と装着感に優れ、日常使いにも適している。そしてムーブメントの革新性は、もっともマニアックな時計愛好家の心をも掴む魅力を持っている。
 販売元はロンドンのSubdial。ティムとそのチームによって、このIWC Ref.3711は現在、希望価格5450ポンド(日本円で約103万円)で公式サイトに掲載されている。詳しくはこちらから確認できる。
 

「#SpeedyTuesday」でお馴染みのFratello Watchesとオリスのコラボレーションモデルが登場。

2度目となる今回の新作は限定300本の ダイバーズ 65 フラテッロ リミテッドエディション 01 733 7707 4094。

激渋なブラックベースのダイバーズ65で、ケースサイズは 40mm。

このタイミングなのでキャリバー400搭載機なのかと思いましたが、価格重視でキャリバー733(セリタ)を採用したそうです。

300本限定のうち250本は12/6からFratello Watchesで販売されるとのこと。

価格は1,900ユーロ(約272,000円)です。

 

リファレンス 01 733 7707 4094

時計の仕様
ブランド オリス
モデル ダイバーズ シックスティファイブ・フラテッロ リミテッドエディション
リファレンス 01 733 7707 4094
文字盤 ブラックグロスダイヤル、オリスオリジナルタイポグラフィーとスターマーク、3時位置の日付表示、アワーマーカーと針にスーパールミノバ “ヴィンテージ “を使用
ケース素材 ステンレススチール
ケースサイズ 直径: 40mm – 厚さ: 13mm – ラグからラグまで: 48mm – ラグ幅: 20mm
クリスタル 反射防止加工を施したサファイア
ケースバック ステンレススチール製ケースバック、特別刻印とxxx/300のシリアルナンバー入り
ムーブメント  オリス キャリバー733(SW200-1ベース)。振動数28,800vph、26石、38時間パワーリザーブ
防水性 100メートル/10気圧
ストラップ ブラックレザーカーフストラップ(20/16mm)、” Oris “サイン入りバックル、ラバートロピックスタイルストラップ(20/16mm)、”Oris “サイン入りバックル
機能 時刻表示、日付表示、ダイビングスケールベゼル
価格 1,900ユーロ(消費税別)EU圏内にお住まいの方は、現地の消費税が適用されます。
保証期間 2年間の国際保証
特記事項 300本の限定生産で、各時計に個別のシリアルナンバーが入ります。時計はライトブラウンのレザーポーチ付きです。

 

オリス スター
この新しいオリスダイバーズ シックスティファイブフラテッロ リミテッドエディションのインスピレーションについてお話しましょう。このダイバーズウォッチは、ダイアルに “Star “と表示された1968年のオリスモデルの一つを思い起こさせるものです。

 

ヴィンテージウォッチに関するTBTコラムの著者であるTomas Rosputinskyは、彼が入手したオリジナルのオリススターダイバーについて素晴らしい記事を発表しています。スターマークは単に文字盤のスペースを埋めるために使われていたのではありません。むしろそれは、時計会社としてのオリスにとって重要なマイルストーンを意味するものでした。

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まとめ

いかがでしょうか?

「【2022年新作】オリス × フラテッロ ダイバーズ 65 LE 01 733 7707 4094 40mm  キャリバー733 300本限定 1,900ユーロ」でした。

オリスのビンテージダイバーをオマージュしたデザインで、スぺックとサイズ感は現代寄りで使いやすいのが魅力です。

格好良いですね~、元よりダイバーズ65は武骨なモデルですが、更に男前になっているように見えます。

艶のあるブラックカラーに、特別な「STAR」の文字も刺さります。

 

ダイバーズ65好きなんですよね~。

安いし、かなりオススメな 時計です。

安いし(笑)

パテック フィリップ 40mmのキュビタスをハンズオンの新作情報です。

パテック フィリップは、スイスにおける最高級時計製造の守護者である。Ref.1518、1526、2523、2499といった名作を思い浮かべれば、その評価に異論の余地はない。だが今日、一般的な認知(時計愛好家の世界を除けば)において、パテック フィリップはある1本のモデルメーカーとして最も知られている。それがノーチラスだ。ノーチラスはあまりにも人気が高く、文化的言説に深く根ざしており、その存在を無視することはほぼ不可能である。ノーチラスを身につけるのは暗号通貨トレーダーやヘッジファンドマネージャー、ラッパーやレコード業界の重鎮、テック業界の創業者、映画プロデューサー、アスリート、アートコレクター、国際的な実業家たち...つまりスピード感を持って動き多額を費やし、それを世界に誇示したい人々である。

パテック フィリップスーパーコピー時計 激安ここに、あるジレンマが存在する。あまりにも成功したプロダクトゆえに、その希少性こそが魅力を高めている以上、あえて生産を制限しなければならないという矛盾だ。排他的であることに依存するビジネスモデルのなかで、ブランドはいかにして商業的成功を維持するのか。これは、すべてのラグジュアリーメゾンが頭を悩ませている問いである。パテック フィリップはステンレススティール製のノーチラス 5711を2022年に生産終了とした。

昨年末、新たに登場したスクエア型コレクション、キュビタス(パテック フィリップにとって25年ぶりの新コレクション)は、時計愛好家やコレクターのあいだで大きな話題を呼んだ。その名のとおりユニークなフォルムを持つこのモデルは、時計界の目にはノーチラスの再来と映った。前作を強く想起させるシルエットを備え、もはや近縁種と表現するほかない存在である。本コレクションは3つのリファレンスで構成される。5821/1A-001はオリーブグリーンのサンバーストダイヤルを備えたSS製モデルで、自動巻きCal.26-330 S Cを搭載。5821/1AR-001はSSとローズゴールドのコンビにブルーのサンバーストダイヤルを組み合わせ、同様にCal.26-330 S Cを搭載。そして5822P-001はグランドデイト、曜日表示、ムーンフェイズといった複雑機構を備えるプラチナ製モデルで、超薄型Cal.240を採用。このキュビタスの登場は、パテック フィリップが新たなコレクションを本格的にラインナップに加えたという明確なシグナルであった。その反響は激しく賛否入り混じる声が噴出した。大きな不満の声、理屈をこねた批判、情熱的な論争、そしてわずかながらの称賛。つまり感情が揺さぶられ、波紋が広がったのである。


そしてある意味で予想どおりに、騒ぎは収束していった。キュビタスの注文は入り始めたのだ。喧騒とは無縁だった顧客から、かつては中傷めいた言葉を投げていたにもかかわらず、今では評価を一変させている愛好家たちからも。あらゆる新しいものと同様に、欲望は必ずしも即座に湧き上がるとは限らない。ときに最も成功するデザインとは、最初に最も強い反発を受けるものだったりするのである。


初めてキュビタスを見たのは昨年10月、台北のショッピングモールだった。床は白く磨き上げられ、エレベーターが視界の限界まで縦に伸びるような、いわば磨き上げられたラグジュアリーの殿堂とでも言うべき場所だ。そこに鎮座していたのが、物議を醸していたグリーンダイヤルの5821/1A。ショーウィンドウのなかで誇らしげに輝いていた。ていねいな口調で告げられたのは、展示されている3モデルすべてが顧客用に確保されており、ましてや触れることなどもってのほか、試着など到底許されないということだった。実物を目の前にしても、構えていたほどの驚きや違和感はまったくなかった。強烈な感情が湧くこともなく(私のことを知っているなら、それがいかにまれなことかおわかりいただけるだろう)。目の前にあるのはただのSS製スポーツウォッチにすぎなかった。私はそのまま地下のフードコートへ向かい、小籠包を食べて日常へと戻った。まるでキュビタスが、最初からそこにあったかのように。

キュビタスの初出から5ヵ月後、Watches & Wondersの場で新たに2本のタイムオンリーリファレンスが発表された。いずれも40mm径で、Ref.7128/1RはブラウンダイヤルのRG製、7128/1Gはホワイトゴールド製である。多くの人が予想していたとおり、この小径ケースはそのサイズ感においてヴィンテージ愛好家のあいだで長年支持されてきた3800を想起させるものだった。私自身、Ref.3800のファンであり(3900/1Jでも構わないくらい)、比較的手首が細い女性としてはこの7128のほうが、最初に登場した(私の感覚ではかなり大振りな)45mmモデルよりもずっとしっくりきた。


私は普段、大型ケースを頭ごなしに否定するようなことはしないが、それでも40mmというサイズはより多くの人の手首にしっくりくるバランスの取れた選択だと言える。45mmのキュビタスは正直なところかなりの存在感があり、上から見ると(どんな時計もそうだが)手首の端からはみ出してしまう。対して40mmのスクエアケースは、大胆さを備えつつもほとんどの人にとってつけやすい。私はジュネーヴ・パレクスポの荘厳な会場で、人生初のキュビタスを試着することになった。スクエア型のチョコレートブラウンのサンバーストダイヤルはピンクゴールドのケースと見事な調和を見せ、その温かみのあるトーンはより無骨でモダニズム的なスクエアシェイプのなかに、どこか懐かしく安心感のあるレトロさを感じさせた。一方でブルーとWGのモデルは明らかにクールな印象で趣は異なるが、それでも十分に日常使いできる時計である。

両モデルの内部に搭載されているのは、自動巻きCal.26-330 S C/434だ。ムーブメントはスクエア型のサファイアケースバックから鑑賞可能で、ローターにはダイヤルと同じ水平パターンがエングレービングされている。ハック機能と日付表示を備えたこのムーブメントは実用面でも申し分ない。なお、ブレスレットに関しては特に変更は加えられておらず、ノーチラスの意匠がそのまま受け継がれている。それは当然の判断だ。すでに完成度の極みにあるものを、無理に変える必要はない。ノーチラスのブレスレットは、長らく業界随一の快適性を誇ってきた。しなやかな可動性、絶妙な重量バランス、そして手首に吸い付くような装着感...その完成度はもはや常識を超えている。RGの7128/1RおよびWGの7128/1Gそれぞれの希望小売価格は、1213万円(税込)だ。


キュビタスは、パテック フィリップによっていわば精神的後継機として位置づけられている。ブランドストーリーを再構築して新たな世代に訴求しつつ、過去へのオマージュを込めてフォルムに遊び心を加える...そうした意図が込められているのだ。感情を強く揺さぶられた向きのなかには、“ノーチラスを2025年のカオス文化をとおしてリミックスしたもの”と評する者もいるだろう。これをスポーツウォッチ黄金期へのセンチメンタルな眼差しと受け取るか、それともクッションケース時代の前作に対する笑ってしまうほど控えめな改良にすぎないと一蹴するかは人それぞれだ。だがいずれにしても、これはパテック フィリップのカタログにおける確かな進化の一歩なのである。

パテック フィリップのカタログに、まったく新しいデザイン言語が導入されたという点は注目に値する。スクエアケースのシャープなデザインは、パテック フィリップのほかのモデルとは明らかに趣を異にし、コレクション全体のなかでも異色の存在となっている。しかし、キュビタスのようなスクエアケースが視覚的に際立っている一方で、それを文脈のなかに位置づける歴史的な接点も存在する。たとえば、あまり知られていないが5020や5035などは従来のラウンドケースとは異なる、非伝統的なジオメトリーを採用しており、共通する要素を持っている。特に5020はトノー型ケースを特徴とするモデルとして知られ、クラシカルなラウンドを離れたパテックの系譜のなかでもキュビタスの先駆けとも言える存在だ。このような視点でキュビタスを捉えると、それは突飛な存在というよりも、パテック フィリップのなかに脈々と続く実験的な一面(クラシックからの逸脱を試みる系譜)の延長線上にあるものとして理解できる。そう考えることで、この時計は単なる異端ではなく歴史的な正当性を持った進化形としての意味合いを帯びてくるのだ。

何よりもキュビタスは、現代の時計消費を象徴するタイムスタンプのような存在である。私たちの購買傾向や美意識を、そのまま映し返す大きく光沢ある鏡のような役割を果たしているのだ。まず言えるのは、私たちがいかにジェンタ風のデザインに依存し続けているかという事実だ。そこから逃れることはもはや不可能である。私たちの消費文化はスポーツウォッチに執着している。ちょうどアスレジャー(athleisure、アスレチックとレジャーを組み合わせた造語)に執着しているのと同じように。アスレジャーはもはや単独でファッションを語るスタイルではなく、衣服のあらゆる領域に静かに浸透してしまった。そして、それと同じことがSS製のスポーツウォッチにも当てはまる。私たちはそこから抜け出せずにいるのだ。

こうした圧倒的な人気モデルを取り巻く“ハイプ”から逃れることはできない。それは、個人の表現を犠牲にしてでも、SNS上で富の誇示を糧とする文化のひとつの症状である。ハイプはあらゆる消費カテゴリにまたがって存在するが、SS製の5711が13万ドル(日本円で約1920万円)超で取引されたパンデミック期ほどの熱狂を見せることはまれだ。私たちは今、ルイ・ヴィトンのモノグラムがあふれる世界に生きている。そしてラグジュアリーウォッチはレッドカーペットの上にまで登場し、もはや時計収集という曖昧で閉ざされた世界の外側にいる人々にすらその存在が認識されている。

スポーツウォッチは、今やあらゆるブランドにとってその時代の名刺代わりとなっている。ラグジュアリー業界を構成する主要プレーヤーたちは、この潮流をさらに加速させている。知的な挑戦やビジョンを打ち出すのではなく、ただ消費者の欲望をなぞるかたちで応えているのだ。この不確かな時代に、商業的成功が保証された路線からわざわざ外れようとするラグジュアリーブランドの経営層などいるだろうか?

商業的な魅力とは別に、時計界の聖域ともいえる内側には新しいものを渇望する声がある。しかし皮肉なことに、いま彼らが斬新だと持ち上げているスタイルの多くは、かつてごく当たり前に存在していたものであることに気づいていないようにも見える。私たちが身につけるもの(衣服からジュエリー、そして時計に至るまで)はすべて循環している。トレンドとは時間軸の上に存在するものなのだ。キュビタスが証明しているのは、デザインコードにこそ安心感と親しみが宿るという事実である。それはテイスト、ステータス、アイデンティティを伝える視覚的言語を表している。「こうしたコードは時とともに変化するものの、1970年代に生まれた最も強力なスタイルの多くはいまなお影響力を持ち続けている。たとえその古さが見え始めていたとしても」。こう語るのは、まもなくローンチ予定の新時計ブランド、パターン・レコグニションの創業者マイケル・フリードマン(Michael Friedman)氏だ。「時計業界はこれまで、伝統的に年齢層の高い顧客に向けて展開されてきた。そして今、そのターゲット層、特にジェネレーションXの年長世代がリタイアを目前に控える年代に差しかかっている。彼らにとって1970年代の美学を宿す時計は、単なるレトロ趣味ではなく世代の記憶に深く結びついた象徴的存在なのだ。ベビーブーマーがミッドセンチュリーのデザインや1950年代のツールウォッチに引かれたのと同様に、この世代は自らの最盛期を象徴するものとして、ラグジュアリースポーツウォッチの時代に目を向けているのである」

キュビタス、そしてそれと似たような時計たちは、ある特定のデザイン言語に大きく依存している。それは今、文化的サイクルの終焉に差しかかっているのかもしれない。参照点は明確であり、そこには日に日に強まるノスタルジーが漂っている。しかしそのノスタルジーこそ、そしていまだに共鳴し続けるコードの力こそが、欲望を駆動し続けているのだ。ノーチラス誕生から間もなく50年を迎える今、キュビタスはジェラルド・ジェンタ的デザインに強く影響を受けた時代の最後の反復を示しているのかもしれない。あるいはキュビタスこそが、その最終章なのだろうか。

“フォティーナ”か“ニューオールドストック”かという長年の議論に、1本の時計で決着をつけた。

ヴィンテージ調デザインの時計が発表されるたび、私は目を覆い、その指のあいだから覗き見ながらコメント欄をクリックしてしまう。そして少しスクロールをして、誰もいない部屋でひとりこう叫ぶのだ。“また子どもたちがケンカしてるよ!”。私に言わせれば、ヴィンテージ感を演出するためのただのデザイン手法にすぎない、この“フォティーナ”をめぐる議論はもう何十年も続いている気がする。だがもしもその争いが終わるとしたら? もしも、下に並んだ2本の時計が実は同じ時計だとしたら、あなたはどう思う?


 ニバダ グレンヒェンのアクアマーはかつて存在したスキンダイバーであり、よりカジュアルで日常使いしやすいダイバーズウォッチのスタイルとして、ウォータースポーツが一般市民のあいだでレジャーとして広まり始めた時期に人気を博した。このアクアマーは1960年代に初登場し、当時は3時位置に日付表示を備えていた。しかし現在、その日付表示はある仕掛けに置き換えられている。しかもそれはおそらくこれまで時計に使われたことがないまったく新しいトリックだ。

リューズをひねるだけで夜光の色を切り替えることができる。その仕組みの詳細を知りたい方はこちらから。
 今回ニバダ グレンヒェンは、ソプロード社製の自動巻きムーブメント Cal.P024(パワーリザーブは38時間)の日付表示ディスクを夜光ディスクに置き換えた。このディスクは、ヴィンテージ調の色味とホワイトのルミノバとを切り替える仕様で、オレンジのセンターセコンドと呼応するように、外周にはオレンジのリングがあしらわれている。アワーマーカーに穴が開いていてその下にある夜光ディスクが見える構造だが、イメージとしてはパネライ独自の“サンドイッチダイヤル”のようだ。リューズを操作して日付を合わせるのと同じ要領で、夜光の色を一瞬でヴィンテージ調からモダンなスタイルに切り替えることができる。なかなかクールな仕掛けだ。
 この時計は直径38mm、厚さ12.9mmで、ケース素材には316Lステンレススティールを採用。裏蓋はソリッド仕様で、風防にはダブルドーム型のサファイアクリスタルが用いられている。3つのバリエーションで展開され、大きめの開口部を持つブルーまたはブラックのダイヤルと、レイアウトが少し異なるグレーダイヤルがある。唯一意見がわかれそうなのは、夜光の色を変えられるのはダイヤル部分だけで、針までは変えられないという点だ。ブラックとブルーのダイヤルには色付きの夜光が施されており、グレーダイヤルにはホワイトの夜光針が組み合わされている。
 価格は税抜きで1050ドル(日本円で約15万円)で、さまざまなストラップオプションが用意されており、SS製ブレスレットの場合は追加料金がかかる。個人的にはトロピックストラップ仕様を選びたいところだ。


我々の考え
お察しのとおり、“フォティーナ”をめぐる終わりの見えない論争について私なりの意見がある。そしてどちらの立場かもすでに決めている。もちろんこんなことを言えば火に油を注ぐことになるのは分かっているが、この時計(そしてこの記事)がちょっと“波風を立てる”ようなものだとしても、時計も私の皮肉も愛から生まれているのだ。個人的に、これはとても楽しくて魅力的な1本だと思っている。

 ニバダ グレンヒェンは着け心地のよい優れたスキンダイバーを手がけている。ソプロード社製ムーブメントに否定的な声があるのは承知しているが、この価格設定は十分に妥当だと思う。グレーダイヤルについては、やや視認性に難があるかもしれない。上層のダイヤルの影が下にあるインデックスを覆ってしまっているように見えるからだ。ただ、ブルーダイヤルにブルーのトロピックストラップを合わせたモデルは夏にぴったりの爽やかな1本だろう。



基本情報
ブランド: ニバダ グレンヒェン(Nivada Grenchen)
モデル名: アクアマー(Aquamar)

直径: 38mm
厚み: 12.9mm
ケース素材: 316Lステンレススティール
文字盤色: グレー、ブルー、ブラックの3種類
インデックス: サンドイッチダイヤルとプリント
夜光: クリーミーな“パティーナ”夜光とホワイトの夜光
防水性能: 200m
ストラップ/ブレスレット: さまざまなストラップやブレスレットのバリエーション


ムーブメント情報
キャリバー: ソプロード社製P024(Soprod P024)
機能: 時・分表示、センターセコンド表示、切り替え可能な夜光
パワーリザーブ: 38時間
巻き上げ方式: 自動巻き
クロノメーター認定: なし
追加情報: 風防にはダブルドーム型のサファイアクリスタル

価格&発売時期
価格: 税抜きで1050ドル(日本円で約15万円)から
発売: すぐに
限定: なし

オススメ4モデル「冬のボーナスで腕時計を買おう!」

オススメ4モデル「冬のボーナスで腕時計を買おう!」

2年ぶりの「「冬のボーナスで腕時計を買おう!」2019年にオススメしたモデルを振り返る」です。

2019年の冬のボーナス時期(12月末)にオススメした4本の時計を、翌2020年では相場がどう変化したのかチェックしましたが、昨年はすっかり忘れて2年ぶりとなりました。

ね~、タイミングが悪い(笑)

昨年末だったら、こんなに相場が変わりましたよ!って内容で書けましたが、今年はねぇぇ・・・特に現在は相場が悪いのです。インパクトの無い内容になるかも知れません。

でも流石にオススメした2019年と比較すれば、まだまだ下がっていないとは思います。

あの時オススメしているので、下がっているわけにはいかないのだ!

 

1.オーデマ・ピゲ 15500ST.OO.1220ST ロイヤルオーク41mm


まずオススメした1本目は、2019年の新作ロイヤルオーク 15500STです。

前作15400STと同じ41mmですが、自動巻きキャリバー4302へとムーブメントを変更しています。

発売当時国内定価は2,200,000円でしたが、現在は2,365,000円に上がってしまいました。
と、2020年のブログを引用しながら現在の相場をチェックしていきます。

国内定価がさらに上がっており、現在は3,190,000円。

2019年から3年で100万円も定価が上がるって信じられませんね・・・。

コスト高に円安と最悪な時期です。

ただ定価で欲しくても買えないというオマケ付き。

とても良いモデルですので、オススメはしたいのですが・・・

 

こちらは2019年12月のChrono24。

15500ST系ではグレー文字盤が1番安かったですね。

「TOP」のタグが付いているのはお金を払って1番先に表示するサービスを利用した投稿です。

2019年の最安値は税抜250万円でした。今見ると安い!

それでも当時の定価以上。

 

こちらが2020年12月。

最安順にソートすると黒文字盤とシルバー文字盤が出てきました。

グレーより数が多いのかな。

最安値も税抜300万円からスタートと、1年で相場を50万円も上げています。

 

そしてこちらが現在2022年の15500ST。

最安掲載は2021年の保証書付きグレー文字盤。

税抜で490万円!

中古ですが、定価の約1.6倍・・・元々スティールの3針モデルに300万円?って言うくらい高級モデルなのにプレミアム価格。

2019年に背中を押されて買ってくれた方いらっしゃったかな?

当時のプレ値の300万円で買っててもまったく損していません。

 

新品未使用品の相場を価格ドットコムのグラフから見てみますと現在は約900万円。

いやいやいや・・・中古との差がかなり大きく開いていますね。

一時期1000万円ちかくまで上がっているのも凄いですけどね。

因みにブルー文字盤は高過ぎてオススメできません。

 

こちらは楽天市場です。

まだ500万円台で販売されていますが、数が多いのでもう少し時間が経てば400万円台になるでしょうか。それでも充分高いですけど。

 

2.オメガ 310.20.42.50.01.001 スピードマスターアポロ11号 月面着陸50周年記念


2本目はスピードマスターアポロ11号 月面着陸50周年記念モデル 310.20.42.50.01.001です。

コーアクシャル脱進機搭載のキャリバー3861、限定本数は6,969本、国内定価は1,133,000円。

限定とは言え7000本近いのと、定価が100万円オーバーなので爆発的には人気となっておりませんが、作りは非常に良かったです。

個人的にはブレスレットが特別格好良く感じました。
こちらも定価が上がり現在は1,320,000円。

6969本もあるのに完売ですからね、スピードマスターの人気も上昇中。

 

2019年の新作でしたが・・・2019年の12月では国内定価以上の相場になっていました。

 

が、2020年12月には相場が下がっています。

やっぱり限定数が多すぎたかな?

しかし・・・

 

ジャ~ン!

現在は税抜180万円が最安値!

かなり出世しましたね。

文字盤デザインも格好良いし、ブレスレットの形状もイケています。なによりアポロリミテッドが出なくなってきたので、新キャリバーのこちらの評価が上がってきたのかも知れません。

2019年にオススメしつつ、2020年では下がっていたのでちょっと心配しましたが・・・

 

現在は高評価モデル。

一安心(笑)

 

3.ロレックス 226659 ヨットマスター42mm


3本目は新作ヨットマスター 226659で、新キャリバー搭載、ホワイトゴールドケースは42mmと大型化しています。。

おそらくアクアノートのホワイトゴールドケースを意識しているんだろうと思いますが、コレは実物が非常に非常に良かった。

ロレックスを見直しちゃいました。

しっかりした重さと、美しいケース、シックですがスポーティで視認性の良い文字盤。

当時の国内定価は2,940,300円(2020年1/1に変わり現在は3,052,500円)。

高級モデルですが、更にプレミアム価格になっていますね。

新作だってのもありますけど、本気で一生モノの腕時計だと思います。
そしてロレックスです。

12月に入り新宿GMTさんのセールは目を疑うほど安価なものが数多く並びますが、それでも完売しにくくなっているのがロレックス含めプレミアム価格が付いた時計たち。

相場がだいぶ落ち込んでいます。

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私の予想では2021年の年末くらいまでは下がるかな?なんて思っていましたが、気付けば2020年の年末くらいをゴールに突き進んでいる感じがしますね。

デイトナ黒なら300万円、こんな感じでしょうか。

で、ホワイトゴールドのヨットマスター42です。

 

今年の新作にファルコンズアイ文字盤とイエローゴールドのYM42がラインナップし話題になりましたが、さてさてノーマルモデルの226659の相場はどうなったかな?

2022年の9月に国内定価は3,516,700円に改訂されました。

 

こちらは2019年のChrono24。

当時の定価294万円を少しだけ上回る税抜310万円ほどから掲載されていました。

 

そして2020年。

あまり変わっていませんね。

 

で、2022年・・・

個人出品を除けば最安は税抜387万円、新品394万円と、どうでしょう2020年よりは高くなっていますか。

 

楽天市場を覗くと中古で410万円くらいからと、Chrono24と同じような相場ですね。

 

4.ロレックス 新シードゥエラー43mm 126600 初期モデル「ノークラウン」


4本目は2017年の新作シードゥエラー43mm 126600の中古品になります。

やや稀少性が増してきていて現行機なんですが文字盤が現行機と違うんです。

「王冠なし」の旧文字盤、コレね「今のうち」に買っておいたらどうでしょう?と言う話です。

新古品を探しても良し、普通に中古品でも良し、保証書付きにしましょう。

当時の国内定価は 1,197,900円(2020年1/1に変わり現在は1,230,900円)。

中古相場は140万円くらいからでした。
さて、最近あまり聞かなくなった「ノークラウン」のシードゥエラー43です。

ノークラウンにはあまり関係ありませんが現在の126600の国内定価は1,533,400円と、2019年時に比べると34万円も上がっています。

少しだけレアな文字盤、ノークラウンの相場をチェックしてみましょう。

 

こちらがオススメした2019年の相場。

およそ140万円(税抜)からの掲載でした。

定価に比べれば少し高い程度で、王冠なしの認識も薄い時代ですね。

 

で、2020年。

ロレックス全体の相場が上がったことでノークラウン(2017年で絞ってます)の相場も上向き。

 

そして最後、おちらが現在2022年のChrono24。

微妙ですが税抜178万円程から掲載されています。

2017年製造で絞っていますが5年も経つので中古は状態もかなり差があるでしょう。

なんやかんやで下回っていませんが、そこまでオススメじゃなかったのかも知れません。

2019年に私のオススメで購入された方いらっしゃいますか?まだ使用されていますか?

スミマセン、まだこれからです!


4モデルどれも価値を下げていませんね。

なかなかなオススメだったと思います。

中でもロイヤルオークとシードゥエラーは「当たり」だったのではないでしょうか。

我ながら良いオススメでした。
今回も4本とも何とか価値を下げていませんでした。

良かった。

ちょっと相場の動きが下向きなので、次回大きく結果が異なるかも知れません・・・