2025/12/22
ムーンフェイズを纏ったチューター:1926コレクションの新たな魅力
月相(ムーンフェイズ)という機能は、確かに由緒正しい伝統の象徴です。しかし、近年はスポーツウォッチで知られるブランドまでが、このロマンチックな機能に再び注目を寄せています。その最たる例が、タドラー(Tudor)が新たに発表した「1926 ムーンフェイズ」です。
私たちはいつも「ビンテージ」や「ペルウェイザー」の新作を楽しみに待っていますが、実はタドラーの歴史において、これが初のムーンフェイズモデルとなるのです。その存在は、予想を遥かに超える驚きと、意外性に満ちています。
1926コレクションとは何か?
タドラーと聞いて、まず「1926」コレクションを思い浮かべる方は少ないかもしれません。このコレクションは、創業者であるハンス・ヴィルスドルフがタドラーの設立年号にちなみ、2018年に初めて登場しました。
「ビンテージ」や「ペルウェイザー」のような派手なスポーツモデルとは一線を画し、これは主にアジア市場をターゲットにした、クラシックでエレガントなドレスウォッチです。高級感とコストパフォーマンスを兼ね備えたこのシリーズに、今回、ムーンフェイズという新たな彩りが加わったのです。これは、同シリーズの復活を果たすだけでなく、タドラーの製表哲学を再認識させる、極めて成功した試みと言えるでしょう。
外観:控えめなエレガンス
新作の1926 ムーンフェイズは、ステンレススチールのケースに身を包みます。
サイズ: 直径39mm × 厚さ10.1mm。
ケースフィニッシュ: ベゼルとケース側面は光沢のある鏡面研磨(ポリッシュ)が施され、上品な輝きを放ちます。
防水性: スクリューダウン式のリューズを採用しているため、防水性能は100m。フォーマルな佇まいながら、日常の水濡れには強い作りです。
ブレスレット:タドラー伝統の「7列リンク」
ブレスレットには、タドラーお馴染みの「7列リンク」(通称「7ビーズチェーン」)を採用。手首に沿うような柔軟性と、しっかりとした重厚感が特徴です。ただし、残念ながら最近流行の微調整機構や、ワンプッシュ脱着システムは搭載されていません。
文字盤:3色展開と周董(ジョージ・チョウ)の香り
今回の新作は、ブラック、ブルー、シャンパンゴールドの3色の文字盤がラインナップされています。
その中でも注目すべきは、シャンパンゴールド。これはタドラーのアンバサダーである周杰倫(ジョージ・チョウ)氏と共同設計されたモデルで、「周董モデル」とも呼ばれています。
希少性: シャンパンゴールドのムーンフェイズは、市場でも非常に珍しい存在です。
月光の如く: この色は月そのものの色に近く、まるで時計全体が皎潔な月明かりに照らされているかのよう。
精密な月の動き: 金色のディスクが、黒くくり抜かれた窓の後に徐々に隠れていく様は、月の満ち欠けをリアルに再現しています。
月相機能の魅力は、1年間に通常12回訪れる満月。その周期は約29.5日。しかし、暦と自然の法則は完全には一致せず、年に13回満月が訪れる年もあります。この1926 ムーンフェイズは、24時間表示を正確に行うだけでなく、この全く異なる月相周期をも同調して測定することができるのです。
ムーブメント:信頼のSellitaベース
1926 ムーンフェイズはドレスウォッチですが、裏蓋は他のタドラーモデル同様、シールドバック(密底)です。
コスト面の配慮から、タドラーが自社で製造する「ケニッシ(Kenissi)」製ムーブメントではなく、Sellita(セリタ)社製のベースを搭載しています。
型番: T607-9(SW280-1をベース)。
性能: 振動数は28,800振動/時間。動力は38時間。
評価: 「ケニッシ」ほどの名声はないかもしれませんが、このキャリバーもまた天文台(COSC)級の精度を持ち、正確さと信頼性において数十年にわたる市場の検証を受けてきた、実績ある機械式時計です。
まとめ
約21,000元(約43万円前後)という価格帯で、ブランド力があり、性能が確かで、ルックスも優れ、さらに周杰倫氏のコラボレーションという要素を兼ね備えた、タドラー史上初の月相腕時計を手に入れることができるのです。これを「文句の付けようがない選択肢」と言わずして何と言うでしょうか。