アルパイン イーグルの日本限定エディションが登場した。

ラグジュアリースポーツと呼ばれるジャンルの人気は依然高く、各ブランドからそれぞれ力のこもったモデルが揃う。そのなかでもひと際気炎を上げるのがショパールのアルパイン イーグルだ。だが、それを十把ひとからげに括ることはできないだろう。なぜならルーツは1980年に発表された名作サンモリッツにあり、その正統な後継にほかならないからだ。

サンモリッツは若き日のショイフレ氏がブランド初のスポーツウォッチコレクションとして開発を進言し、ショパールで初めてステンレススティール(SS)を採用したことでも話題を呼んだコレクションだった。結果、サンモリッツはブランドの代表作となり、以降L.U.Cの開発を始め、現代に続く本格的な時計製造へのエポックメイキングとなった。そのサンモリッツに魅せられ、新たな時計づくりを決意したのは息子であるカール-フリッツ氏だ。彼らの情熱は祖父のカール・ショイフレ3世をも巻き込み、こうして3世代の手によって誕生したのがアルパイン イーグルである。

ローンチイベント会場に展示された日本限定モデル、アルパイン イーグル 日本限定 エディション “SHIKKOKU”。その詳細については本稿の後半で後述するとして、まずはコレクション全体のおさらいをしたい。

アルパイン イーグルコレクションは2019年に36mm径と41mm径の2種類のケースサイズの3針モデルから始まり、翌20年には44mm径のフライバッククロノグラフ、そして21年には5万7600振動/時(8Hz)の高振動キャリバー Chopard 01.12-Cを搭載した限定モデルを発表し、魅力の幅を広げた。昨年は33mm径のケースバリエーションとCal.L.U.C 96.24-Lを採用したフライングトゥールビヨンのコンプリケーションによってさらなる新境地を開き、これに続くべく今年はCal.L.U.C 96.40-Lを搭載した極薄モデル、アルパイン イーグル 41 XPSも発表された。多彩な布陣は次世代のブランドアイコンと呼ぶにふさわしい。
そして新たに加わった日本限定エディションのローンチイベント会場に選ばれたのは国立競技場であった。都会の中心にありながら神宮の杜に位置し、多くの天然木をあしらい、最新鋭の競技施設に日本建築の伝統を宿す。それと共鳴するかのように、日本限定エディションは“SHIKKOKU(漆黒)”という名にふさわしい情緒的なブラックを纏い、禅へのオマージュとともにシンプリシティを極める。さらに新アンバサダーとしてラグビー選手の稲垣啓太氏の就任が発表され、この地を舞台に日本中を包み込んだ熱狂と感動を再び思い起こさせたのだった。

スポーツシックと位置づけられたアルパイン イーグルの人気は世界でも日本が最も高く、今回の限定エディションはその感謝の気持ちから実現したものだとローンチイベントの壇上に上がったショイフレ氏は語った。さらに3世代が関わったコレクションの開発現場では、自身の父と息子が特に仕上げについてサテンとポリッシュで意見が分かれ、結局、その両方を取り入れたらいいじゃないか、と折衷案で取り持ったという微笑ましい裏話も披露。彼は「ふたりともせっかちで、私がいちばん忍耐強いんです」と会場の笑いを誘う。

アルパイン イーグルは、ブランドに継承され一貫する時計づくりを象徴する存在であると同時に、次世代に向けた革新的な技術が注がれている。それがスティールをリサイクルしたルーセントスティール™である。先のWatches & Wonders 2023でも、ショパールは2023年内にこれをすべてのSS製ウォッチに採用すること、さらに現在は80%以上に留まるルーセントスティール™のリサイクル率を2025年までに90%以上に引き上げる目標を掲げ、サステナブル・ラグジュアリーのさらなる強化を宣言するほど、ブランドにとって極めて重要な意味を持つ。

かつてサンモリッツが当時の先進素材だったステンレススティールに注目し、ブランドで初採用した前例に倣うなら、ルーセントスティール™ほどアルパイン イーグルにふさわしい素材はないだろう。はたしてその採用は必然だったのか。ショイフレ氏に話を伺った。

「サステナビリティに取り組むなか、すでに実用化していたエシカルゴールドに続き、ステンレススティールのリサイクルについて研究と開発を進めていました。このプロジェクトが先行する一方、アルパイン イーグルのプロジェクトがスタートしました。当初から採用を考えていたわけではないですが、結果的にいいタイミングで両者が揃ったというわけです」

そして着実にコレクションを拡充するアルパイン イーグルと歩みをともに、ルーセントスティール™の生産技術も進化を遂げてきた。

「私たちは毎年25tのステンレススティールを使用しています。かなりの量になりますが、ある程度導入の目処が立ったので新たな目標を掲げました。期限を決めた大きなチャレンジですが、リサイクル率を90%に上げれば通常の工程でステンレススティールを製造する場合と比較して、二酸化炭素を4割ほど削減できます。ぜひ実現したいですね」

このルーセントスティール™は、新作のL.U.C 1860にも採用され、初代L.U.Cをモチーフにしたタイムレスなスタイルをより現代的にアップデートする。ルーセントスティール™の価値はいまやL.U.Cと肩を並べ、未来を見据えた革新性と揺らがぬ哲学を象徴するのである。

「じつは最初、日本チームからアイデアを提案された時は懐疑的だったんです」とリミテッドエディションについてショイフレ氏は言う。というのも、深遠なブラックのダイヤルにトーン・オン・トーンのインデックスと針を備え、瞬時には時間が読み取れないような仕様だったからだ。その“SHIKKOKU”と名づけられ、日本文化と伝統が育んできた漆工芸品を思わせる艶やかな黒は、禅の美学と端正な粋を極める。ダイナミックなアルプスの大自然から着想を得てきたコレクションの世界観とは印象が異なったのだろう。

 「角度によって時間が見えたり見えなかったり。でも次第にそこがとてもミステリアスでユニークだと感じました。もしかしたら、ときには時間が見えないほうがいいのかもしれない。今ではとても気に入ってますよ」と微笑む。

ダイヤルに施された装飾、アプライドのインデックスだけで視認性を確保した漆黒のダイヤルはまさに神秘的な印象を与える。

ダイヤルのミステリアスな雰囲気に合わせたティンテッドガラスによるシースルーバック。

新たに採用されたセーフティプッシャー付きのルーセントスティール™製トリプルフォールディングバックル。
ムーブメントは、現行シリーズが採用しているクロノメーター認定のCal.Chopard 01.01-Cをベースに、ミニマルな美しさを極めるため、あえてカレンダー表示を外したCal.Chopard 01.15-Cを搭載している。
実機を見ると、ルーセントスティール™ならではの品格あるホワイトゴールドのような光沢感に“SHIKKOKU”独特のフェイスが際立つ。正面からはまるで時間さえも存在しないブラックホールを思わせるのに対し、少し角度を変えると鷲の虹彩をイメージした独特のテクスチャーが浮かび上がる。腕につければその表情や色相もより多彩に変化するのだ。

針やインデックスにはクールグレーのスーパールミノバ®️を配し、暗所ではグリーンの光を灯す。またケースバックにはコレクション初となるティンテッドガラスによるシースルーバックを採用し、フェイスと共通した印象を与えている。

クールグレーのスーパールミノバ®️を塗布し、暗所での視認性を確保する。
 「こうしたミステリアスさと視認性を両立させるため、針は5種類から、表裏のサファイアクリスタルも3種類を試作しました。特にこだわったのはどのように見えるか。光や微妙な陰影が日本の文化ではとても重要だと思いました。求めたのはスクリーン越しに時間を見るようなイメージです」

漆黒に見え隠れし、移ろう時の表現をとおして、図らずも“陰影礼賛(いんえいらいさん)”の境地に達したのかもしれない。

オーデマ ピゲ多くの素晴らしいモデルが発表される“オフショアイヤー”である。

世の中の出来事に疎い人のためにお伝えしておくと、今年はオーデマ ピゲのラインナップのなかで大きく、そして最もタフなモデルの30周年記念として、多くの素晴らしいモデルが発表される“オフショアイヤー”である。きらびやかなものが好きなファンや、比較的小ぶりな時計が好きな人は心配する必要はない。オーデマ ピゲは37mmのサイズで5本の新作を発表したからだ。

最初のロイヤル オーク オフショア ミュージックエディションが出たとき、確かに賛否両論はあったが、オフショアの一部モデルはセラミックでできた50m防水の新しい37mm径×12.1mm厚のオフショアが登場したことで、オフショアのサブセクションは今や5つの時計を含むまでに成長を遂げた。ブラックにプリントされたマルチカラーの“イコライザー”パターンダイヤル(10色使ったグラデーション)、ジャックプラグを思わせるローレット加工のスタッズ、フェーダーからインスパイアされたリューズガードが特徴的だ。内部には約60時間のパワーリザーブを備えた自動巻きCal.5909を搭載する。ブラックのラバーストラップには文字盤の色と合わせた“モザイク”のモチーフが入っているが、それが好みに合わない場合は、ほかに3色のストラップが付属するため安心して欲しい。また新しい“ミュージックエディション”は250本の限定品だ。

今回発表された37mmサイズのロイヤル オーク オフショア クロノグラフのうち、いちばんヒットしそうだと思うのは、ピンクゴールドの“レインボー”モデルと、スティール&サーモン文字盤にダイヤモンドベゼルを組み合わせたモデルである。レインボーを選ぶとバゲットカットされた32個ものルビー、ツァボライト、トパーズ、タンザナイト、アメジスト、そして6色のサファイアが手に入り、そしてサーモンダイヤルのモデルなら32個のブリリアントカットダイヤモンドが手に入る。
異なるものをお探しなら、32個のバゲットカットツァボライトとブルーサファイア、イエローサファイアをあしらったイエローゴールド製の37mmオフショア クロノグラフや、SS製のサーモンバージョンのようなブリリアントカットダイヤモンドが32個セットされた18KPGモデルもある。これらの時計はすべて約40時間パワーリザーブを持つ自動巻きCal.2385を搭載する。厚さは12.4mmで、50mの防水性を持ち、こちらもほかのストラップオプションが付属している。

我々の考え
オーデマ ピゲがジェムセッティングを知らないとは決して言わせない。これらの新しいリリースは、ここ数年の多くのロイヤル オークやロイヤル オーク オフショアに続くもので、オーデマ ピゲがジェムセットウォッチをブランドの一部として、真の芸術へと高めるために費やした時間と努力を示している。またこれらの発表はブランドが常に、より多くの顧客が何を好むかを考えていることも表している。たとえそれがリリースのたびに自身の望むものを与えてくれると限らないとしてもだ。

最後まで聞いて欲しい。私がいちばん好きな時計はレインボー デイトナと、サーモンダイヤルをまとうホワイトゴールド製ロイヤル オーク ジャンボ(リファレンスナンバーが好きな愛好家のために。15202BCだ)の2本で、どちらも多くの読者が求めるすべての条件を満たしていると思う。両モデルともさまざまな理由によりブランドを象徴するものだし、オーデマ ピゲはこれらのリリースでファンに敬意を表しているように思う。確かに(新作の)ダイヤモンドをセットしたサーモンダイヤルの37mmオフショアは、いつか発表されることを切に望んでいるSS製“ジャンボ”サーモンではないが、ただ心の片隅では“ああ、これならつけてみたい”と思っている。
そして次に37mmのセラミック製オフショア“ミュージックエディション”だ。オーデマ ピゲの歴史のなかでいちばん好きなリリースだという人はほとんどいないだろう。オーデマ ピゲを愛し、お遊び用の高価な時計が買えるセレブなミュージシャンのために作られたスペシャルな時計のように感じられる(ジョン、エド、マーク、もしこれを読んでいるならよろしく)。でも実物を見たことがあるが、全然ひどいものではないし、もし私がお金に余裕のあるミュージシャンだったら買っていたかもしれない。

“Price on Request(リクエスト価格)”というのはフラストレーションのたまるフレーズだから、もっと具体的な回答を得るために、私はブランドから具体的な回答を求めている(※)。でももっとポジティブに考えるなら、“シュレーディンガーの値段”のようなものだと想像して欲しい。まあお金を払えるかどうかは実際に話を聞くまでわからないけれど。

※編注:現在価格はすべて公開済み。

基本情報
ブランド: オーデマ ピゲ(Audemars Piguet)
モデル名: ロイヤル オーク オフショア ミュージックエディション(ROOME)、ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ(ROOC)
型番: 77600CE.OO.A002CA.01(ROOME)、26231OR.ZZ.A085CA.01(ROOC / PGモデル)、26231ST.ZZ.A178CA.01(ROOC / SSモデル)、26236BA.YY.D346CA.01(ROOC / YGモデル)、26236OR.YY.D002CA.01(ROOC / PGレインボーモデル)

直径: 各37mm
厚さ: 12.1mm(ROOME)、 12.4mm(ROOC)
ケース素材: ブラックセラミック(ROOME)、PGに32個のブリリアントカットダイヤモンドをベゼルにセット(ROOC / PGモデル)、SSに32個のブリリアントカットダイヤモンドをベゼルにセット(ROOC / SSモデル)、YGに32個のバゲットカットツァボライト、ブルーサファイア、イエローサファイアをベゼルにセット(ROOC / YGモデル)、PGに32個のバゲットカットルビー、ツァボライト、トパーズ、タンザナイト、アメジスト、オレンジ・イエロー・グリーン・ブルー・バイオレット・ピンクサファイアをベゼルにセット(ROOC / PGレインボーモデル)
文字盤: マルチカラーのイコライザーが印刷されたブラックダイヤル(ROOME)、レディ タペストリー模様のライトブルーダイヤル&カウンター(ROOC / PGモデル)、レディ タペストリー模様のサーモンダイヤル&カウンター(ROOC / SSモデル)、レディ タペストリー模様のロイヤルブルーダイヤル&カウンター(ROOC / YGモデル)、レディ タペストリー模様のブラックダイヤル&カウンター(ROOC / PGレインボーモデル)。
インデックス: 蓄光処理とブラックPVDを施したWGのアプライドアワーマーカーにロジウムトーンのAPロゴ(ROOME)、蓄光処理を施したPGのアプライドアワーマーカー(ROOC / PGモデルとROOC / PGレインボーモデル)、蓄光処理を施したWGのアプライドアワーマーカー(ROOC / SSモデル)、蓄光処理を施したYGアプライドアワーマーカー(ROOC / YGモデル)。すべてロイヤル オーク針を採用
夜光: あり
防水性能: すべて50m
ストラップ/ブレスレット: モザイクエフェクト装飾付きの交換可能なブラック・ターコイズブルー・イエロー・グリーンラバーストラップセットにチタンピンバックル(ROOME)、交換可能なベージュ・ライトブルーラバーストラップセットに18KPGピンバックル(ROOC / PGモデル)、グレー・ダークグレーラバーストラップセットにSSフォールディングバックル(ROOC / SSモデル)、交換可能なブルー・グリーンラバーストラップセットに18KYGフォールディングバックル(ROOC / YGモデル)、交換可能なブラック・ベージュラバーストラップセットに18KPGフォールディングバックル(ROOC / PGレインボーモデル)。すべてインターチェンジャブルストラップシステムを採用

ムーブメント情報
キャリバー: 5909(ROOME)、 2385(ROOC)
機能: 時・分・センターセコンド(ROOME)、時・分・スモールセコンド、クロノグラフ(ROOC)
直径: 26.18mm(ROOME)、26.2mm(ROOC)
厚み: 4mm(ROOME)、5.5mm(ROOC)
パワーリザーブ: 約60時間(ROOME)、約40時間(ROOC)
巻き上げ方式: すべて自動巻き
振動数: 2万8800振動/時(ROOME)、2万1600振動/時(ROOC)
石数: 29(ROOME)、37(ROOC)

価格 & 発売時期
価格: ロイヤル オーク オフショア ミュージックエディション(ROOME)は522万5000円、ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ ジェムセット バージョンは26231OR.ZZ.A085CA.01(PGモデル)は715万円、26231ST.ZZ.D178CA.01は(SSモデル)は500万5000円、26236BA.YY.D346CA.01(YGモデル)と26236OR.YY.D002CA.01(PGレインボーモデル)は1375万円(すべて税込)
発売時期: 2023年 7月以降順次入荷予定
限定: あり、ROOMEのみ250本限定

この時計は、Ref.1463 "Tasti Tondi"のような、最もアイコニックな時計を所有することを夢見ながらも、

自分のコレクションにファーラン・マリを加えていた。しかし、ほとんどの人にとって、これらの時計は「偉大な時計」のひとつにちなんだものを身につける手頃な方法であり、実際に手に入れることができた。まぁ、そんなところだ。
私はいつもこのような限定モデルを見逃していた。多くの人がそうだった。発表されても、その存在を知る前に完売してしまうようなものだったのだ。そして、その時計は転売サイトに出回るようになり、しばしば元の価格の4倍以上の値段で取引された。いくら見た目が素晴らしくても、メカクォーツへのオマージュとしては、それは受け入れがたいことだった。そして、創業者たちが二度とこれらのモデルを作らないと誓ったため、私はトンディの良さとファーラン・マリが手に入れた魔法を味わうことなく、この先も生き続ける運命を感じた。
しかし、もうそんなことはない。このブランドの共同創業者であるアンドレア・ファーラン氏とハマド・アル・マリ氏もそれに注目し、ブランドの永久コレクションを徐々に展開している。選択肢のなかには、初期のクロノグラフ好きなヴィンテージ愛好家のために、楽しくて特徴的なデザイン要素を多く取り入れた3つの機械式時計があり、グレー、ホワイト、サーモンのセクターダイヤルが用意されている。私はこのうちふたつを手に入れた。最近市場によく出回っているサーモンダイヤルはスキップして、初めてファーラン・マリのリリースを見て以来、私の心をとらえて離さないFOMO(見逃し恐怖症)の度合いを確かめることにした。ネタバレ注意だが、それは素晴らしいものだった。
基本的に、このブランドはヴィンテージウォッチの優れた部分、特にクロノグラフのデザインの多くを取り入れ、機械式センターセコンドムーブメントを搭載し、クロノグラフ機能を持たないドレスウォッチスタイルの製品に組み合わせたものだ。あまり手を抜くことなく、また、時計を扱ったり身につけたりしたときに「これは手頃な価格の時計」という印象を与えることなく、新鮮でおそらく少し薄いストラップによる若干の軋みや、安価なムーブメントのローターによる少しのぐらつきを除いては、実現されているようだ。
この時計の1250スイスフラン(記事掲載時点では約20万4000円)という値段は期待値を抑えるのに役立つ情報だが、それでも箱を開けると、フィット感、仕上げ、そしてパッケージングに至るまで、すべてに感動せずにはいられない。
パッケージも、この価格帯でよく目にするものよりも気が利いている。
少なくとも記載されたものを見ると、ケースの寸法は少し奇妙に感じられる。私が着用していた数日間のあいだ、その時計が直径37.5mm、厚さ10.5mmであることは少なからず読んで驚いた。この厚さは、このようなドレッシーな時計にとってはアンバランスのギリギリのように思えるが、「牛の角」のようなラグを採用することで、ラグからラグまでの直径が46mmとなり、手首にバランスよく収まるようになっている。
正直なところ、10.5mmという厚さはそれほど厚くはない。しかし、ラグのカーブしたプロフィールは、ストラップの取り付け位置が低くなるため、視覚的にだけであれば、その高さをわずかに強調することができる。裏を返せば、ラグのあいだから製造番号を覗き見えてしまうのだ。
ようやく時計を手にしたときに目に飛び込んできたのは、仕上げの良さだった。ホワイトダイヤルはふたつのうち圧倒的に視認性に優れ、ミニッツトラックとロゴのブルーの文字がさりげなくブルーの針を引き立てている。
いずれにせよ、この時計には愛すべきベーシックがたくさんある。サテン仕上げのベゼルと段差のあるポリッシュ仕上げのケースは、クリーンでクラシカルなデザインだ(ただし、ステップ部分はすぐに汚れが付着する)。そして、時計を横から見ると、サテン仕上げのミドルケースがラグのサテン仕上げのサイドまで続いていることに気づき、これがポリッシュ仕上げのトップラグととてもよく調和している。

ディスプレイケースバックは、この価格帯にありがちな「気に入らなかったらよせばいい、できればよしておくべきだ」的なオプションではなく、むしろご褒美のように感じられる。確かに、世界最高の仕上げのムーブメントではない。それでも、ラ・ジュー・ペレ社のG100ムーブメントは、期待されるよりも優れたコート・ド・ジュネーブ仕上げとスネイル装飾が施され、回転と重量配分を改善するためにパラジウム・ガルバニックめっきが施されたフルタングステンローターを備えている。防水性に関しても50mであることに変わりはない。ムーブメントはハック機能つきで、これもまたボーナスだ。

ブランドがこれらの時計に採用したすべての小さなディテールを表現する、さまざまな比喩がある。ヴィンテージ時計愛好家にとって、私は"ヴィンテージ・ディテール"の"最高裁判所"の定義に従う。セクターダイヤルの十字線、植字されたブレゲ数字、外周のトラック(これはクロノグラフに適している)などを目にしたとき、あなたの心は、以前に見たことのある特定のリファレンスを探し始めると同時に、まだ独自のまとまりのあるもののように感じられ、多くのものがひとつにまとまっていることを理解するだろう。
ここで、おそらく何人かの人々が「どうして彼はそれに気づかなかったんだ!」と髪をかきむしったであろう、小さなディテールに入る。ヴァシュロン・コンスタンタンのパクリと思われるかもしれない、非常に目立つラグがある。しかし、そう単純ではない。我々はコルヌ・ドゥ・ヴァッシュのラグをある特定のブランドと結びつけて考えるかもしれないが、その時代には多くのブランドが同じケースサプライヤーを使っていたという事実もあり、歴史を通じてこのケース形状を採用した会社は数多くあるのだ。

カーブしたリーフ針は、ドレスウォッチとクロノグラフを組み合わせた文字盤にもかかわらず、この価格にしてはよくできており、ヴィンテージパテックのカラトラバからインスピレーションを得ている。また、ブレゲのアプライドインデックスに深みを与えているのだ。
そして、先ほどのステップケース。裏蓋を見ると、この時計のケースは、伝説的なフランソワ・ボーゲルの最も象徴的で重要なケースデザインのひとつに大きくインスパイアされていることがわかる。私はボーゲルのケースが大好きだ。時計そのものを収集することはできないが、知識を収集するために時計をよく研究していると、そんなものに夢中になる。
このようなディテールは素晴らしいが、ファーラン・マリがここで何か新しいことをやってのけようとしているわけではない。(ヴィンテージウォッチやモダンウォッチにおいて)以前から行われてきたことを、良い場所で素晴らしい実行力にて行っているのであり、そのプラットフォームを使って、何をしているのか、どこからアイデアを得ているのかを強調しているのである。
例えば、ブランドのウェブサイトには、同社の時計が「スイスのジュネーブで想像、スケッチ、デザイン、試作(3Dプリントケース)」されていることが記載されている。これは、「フランソワ・ボーゲルの工房があったのと同じ街で、彼は過去に最も偉大なケース製造者のひとり(1931年に初のガスケット付き防水ねじ込み式ケースバックの特許を取得)であり、今日の象徴的な数多くの時計ケースを供給している」のだ。

ブライトリング クラシックなナビタイマーの新作限定モデルをこっそりと発表した。

アイコニックなパイロットクロノグラフに、クールなグレー文字盤をあしらった米国限定モデルが登場した。

ブライトリングは8月9日、クラシックなナビタイマーの新作限定モデルをこっそりと発表した。大型の46mm径ケースを採用し、米国で300本限定で販売(日本での展開はなし)される、洗練されたダークカラーのパイロットウォッチである。

 46mm径の現行ナビタイマーのほかのラインナップでは、ブラックとホワイト、またはライトブルーとホワイト(そしてグリーンとブラックの組み合わせもある)のハイコントラストな文字盤を採用しているが、この新作ではアンスラサイトダイヤルにブラックのインダイヤルというより控えめな組み合わせが採用された。外周の回転計算尺をはじめとする白いインデックス、針に施された白い夜光、そして文字盤上のレッドゴールドのバーインデックスの先端に施された白い夜光がコントラストを描き出している。
 ほかの46mm径のナビタイマーはSS製かゴールド製であったが、このモデルはSS製ケースに18KRGのノッチ付きベゼルを備えている。それ以外のプラットフォームは変わらない。クロノメーター認定を受けて70時間のパワーリザーブを有し、シースルーバックから見えるブライトリングのマニュファクチュールであるCal.01の搭載に加え、30m防水に3つのインダイヤル、6時位置にデイト窓を備えている。この新作は米国内のブティックや小売店、オンラインストアでのみ購入可能で、価格は1万1900ドル(日本円で約171万4000円)となっている。
ADVERTISEMENT


我々の考え
私はこれまでナビタイマーがあまり好きではなかった。ナビタイマーはいつも大型で賑やかな印象を受けるが、それこそがポイントの時計となっている。しかし航空にまつわるさまざまなエピソードを知り、多くのパイロットに会うにつれて、私はこれらのモデルをアナログウォッチを愛する人々に向けられた実用的で視認性の高い道具として評価するようになった。

 ナビタイマーが誕生して以来発表されたあらゆるバリエーションから探すなら、ヴィンテージゴールドのコスモノートを1本買えるだけの小銭を求めてソファのクッションのあいだを掘り起こすことだろう。ゴールドメッキとツートンカラーのモデルは、その次の位置づけになると思う。ブラックの文字盤と24時間表示のコスモノートシリーズに採用された大きなアラビア数字のコントラストが、ケースのゴールドとよくマッチしている。そしてこのコントラストは視認性を高める手助けもしてくれる。この事実が、私の今回のリリースに対する見解を形作っている。
 もし回転計算尺を備えた時計にそのようなものが存在するならば、新作の限定モデルはナビタイマーにおけるよりドレッシーなオプションのように感じられる。アンスラサイト文字盤とブラックのインダイヤルとの絶妙なコントラストを持つこのモデルは、空の上で命がけのナビゲーションを行うには使いにくいだろう。夜間飛行の際も同様だ。ナビタイマーには例によって夜光塗料がほとんど使われていない。しかし、夜の街(またはほかのパイロットとの集まり)に出かける際に、クラシックで少し高級な、航空への愛を思い起こさせる時計が欲しいのであれば、この時計を腕に巻くのも悪くはないと思う。


基本情報
ブランド: ブライトリング(Breitling)
モデル名: ナビタイマー B01 クロノグラフ 46 米国限定モデル(Navitimer B01 Chronograph 46 U.S. Limited Edition)
型番: UB01371A1B1P1

直径: 46mm
厚さ: 13.9mm
ケース素材: ステンレススティールと18Kレッドゴールド
文字盤色: アンスラサイトとブラックのサブダイヤル
インデックス: レッドゴールドのバーインデックスと回転計算尺
夜光: あり
防水性能: 30m
ストラップ/ブレスレット: ブラックのアリゲーターストラップとSS製デプロワイヤントバックル


ムーブメント情報
キャリバー: ブライトリング マニュファクチュール 01
機能: 時・分・秒表示、クロノグラフ、デイト表示
直径: 30mm
厚さ: 7.2mm
パワーリザーブ: 70時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
クロノメーター認定: あり

価格 & 発売時期
価格: 1万1900ドル(日本円で約171万4000円)
発売時期: 米国のブティック、小売店、およびブランドのWebサイト限定で発売中(日本での展開はなし)
限定: 300本限定

“オメガ×スウォッチ×スヌーピー”新作【11月5日から限定発売】

“OMEGA(オメガ)”と“Swatch(スウォッチ)”によるコラボレートコレクション“ムーンスウォッチ”から、最新作の“MISSION TO EARTHPHASE – MOONSHINE GOLD-SO33N704L”が、2025年11月5日に発売される。

この日は2025年11月の“ビーバームーン”にあたり、最新作“MISSION TO EARTHPHASE – MOONSHINE GOLD”は、11月5日のビーバームーンから新月の11月20日までの発売となる。

■Ref. SO33N704L。バイオセラミック(42mm径)。3気圧防水。クォーツ。5万7200円
BIOCERAMIC MOONSWATCH(バイオセラミック ムーンスウォッチ)
ミッション トゥー アースフェイズ-ムーンシャインゴールド SO33N704L
満月を讃えるシリーズ、“MISSION TO EARTHPHASE- MOONSHINE GOLD”の4作目。ネイティブアメリカンの伝統に由来する11月の月、“ビーバームーン”にインスパイアされたデザインが採用されており、ビーバーに一部をかじりとられたかのような、ユニークで遊び心のある“満月”がムーンフェイズ表示に採用されている。

新作の“ミッション トゥー アースフェイズ-ムーンシャインゴールド”は、前作のモデルの文字盤レイアウトを継承し、スウォッチの最新のイノベーションであるアースフェイズを搭載している。

アースフェイズ表示の下には、NASA非公式マスコットであるスヌーピーと親友のウッドストックがデザインされ、月面から地球を眺めている光景が文字盤にアクセントをプラス。UVライトに当たったときにしか見えない“隠しフレーズ”がデザインされているのも、所有欲をくすぐられるポイントだ。

2時と3時位置の間にあるムーンフェイズ表示は、11月の満月“ビーバームーン”にインスパイアされたもので、ビーバーに一部をかじりとられたかのようなデザインに仕上げられた。歯型の付いた“満月”が印象的だ。

特徴的なダークネイビーブルーのケースは“スウォッチ”独自の“バイオセラミック”を採用(特許取得)。3分の2が高級時計でも使用されるセラミック、3分の1がヒマシ油を原料にしたバイオ由来の複合素材で、マットで滑らかな質感、高い耐久性、快適な装着感を兼ね備えている。

非対称なケースやサブダイアルには、伝説的な名作“Speedmaster Moonwatch”の特徴が随所に反映され、文字盤とリューズには“OMEGA X Swatch”のロゴ、ケース裏面にはミッションステートメントを刻印。

さらに、バッテリーカバーには地球をモチーフにしたデザインが採用され、ネイビーのVELCROラバーベルトも宇宙飛行士風のクールな雰囲気を添えている。

本作の販売期間は2025年11月5日のビーバームーンから新月の11月20日まで。“Bioceramic MoonSwatch”コレクションを取り扱うすべてのSwatchストアで、ひとりにつき1店舗1日1本の販売となる。

IWCが、また新たなアメリカ海軍飛行隊にまつわる腕時計を発表する。

IWC初の全面夜光ダイヤルを備えたパイロット・ウォッチが誕生。

アメリカ海軍飛行隊とのコラボレーションの一環として発表された41mm径のブラック・エイセスは、明るく輝くダイヤルを備える初のモデルとして新たにブランドのコレクションに加わった。

今回はカリフォルニア州リムーア海軍航空基地を拠点とする第41戦闘攻撃飛行隊(VFA-41)、通称“ブラック・エイセス”がパートナーだ。この新作パイロット・ウォッチ ・オートマティック 41・ブラック・エイセスはIWCのパイロット・ウォッチとしては初めて、ダイヤルと針の全面に夜光塗料が塗布されている。

直径41mm、厚さ11.4mmのこの時計は、41mmサイズのトップガンと同様に秒針停止機能付きのCal.32100を搭載しており、一見するとなじみ深いものに感じられるかもしれない。しかし、ダイヤルはまったく異なるものとなっており、独特の存在感を放っている。スーパールミノバ®の顔料は結合剤と混ぜ合わせたうえで円型の鋳型に流し込まれ、セラミックのような耐久性となるまで固められる。その後、軟鉄製のダイヤルにしっかりと固定され、ブラックの印刷が施されるのだ。IWCによると、このダイヤルは23時間以上にわたって緑色の光を放つという。
この時計はオンライン限定で、94万6000円(税込)で販売される。

そう、今回IWCが私の興味を引いたのは確かだ。セラミック製ケースと夜光ダイヤルはどちらもただただクールで、一瞬で私の心をときめかせてくれる。そして新しいパイロット・ウォッチである“ブラック・エイセス”は、IWCが2019年に発表した41mm径のトップガンが作った強固な基盤の上に成り立つものだ。事実、ダイヤルと価格以外はすべて同じに見える。

率直な感想として、夜光ダイヤルが好きな私としてはブラック・エイセスのワッペンがちょっと気になる。IWCはアメリカ海軍の多くの飛行隊とコラボレーションしており、“ブラック・エイセス”の“ブラック”は夜間の暗闇をイメージしているのだと思う。しかしこれがトップガンのようにシンプルなロゴであったなら、私にとってはもっと素晴らしいことであっただろう。私は航空業界には詳しくない。なので、もしかしたら飛行隊のファンのなかには、特定の飛行隊のワッペンが付いているものなら何でも欲しがる人がいるのかもしれない。だが、IWCには今後、夜光ダイヤルのほかの使い方を見つけてもらいたいものだ。

しかし少し調べてみると、ブラック・エイセスの飛行隊は独自のカスタムでパイロット・ウォッチ・マーク XVIIIをデザインし、2023年の初めに納品されていることがRedditの投稿でわかった。その時計が、今回のリリースのきっかけになったに違いない。これはかなりクールだ。

基本情報
ブランド: IWC
モデル名: パイロット・ウォッチ・オートマティック 41・ブラック・エイセス(Pilot's Watch Automatic 41 Black Aces)
型番: IW326905

直径: 41mm
厚さ: 11.4mm
ケース素材: セラミック
文字盤色: ホワイトの全面夜光ダイヤル
インデックス: ブラックペイントによるアラビア数字、バー&ブロックの分・5分表示
夜光: スーパールミノバ®を使用した全面夜光ダイヤル
防水性能: 60m
ストラップ/ブレスレット: ブラックのテキスタイルストラップ

ムーブメント情報
キャリバー: 32100
機能: 時・分・秒表示と秒針停止機能
直径: 25.6mm
パワーリザーブ: 72時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 21
追加情報: 両面反射防止加工を施したドーム型サファイアクリスタルガラス。文字盤に“ブラック・エイセス”のワッペンロゴ。23時間夜光が発光。

価格 & 発売時期
価格: 94万6000円(税込)
限定: オンライン限定

カルバンクライン ホワイトとブラックの文字盤が美しいモデル、2025年秋冬の新作ウオッチコレクションが登場。

1968年にニューヨークで設立されたファッション・ライフスタイルブランド“Calvin Klein(カルバンクライン)”から、2025年秋冬の新作ウオッチコレクションが登場。全国の正規販売店およびオンラインストアにて、順次取り扱いが開始される。

Calvin Klein (カルバン・クライン)
パルス
新作のウオッチコレクションでは、ブランドが掲げる“クリーン”と“モダン”、“ミニマル”を軸に、三つのモデルがラインナップされた。華美な装飾を排したミニマルな造形は、性別やシーンを問わず、着ける人の個性を引き立ててくれる。

まずは、直線的なスクエアケースの中に円形の文字盤を収めた“PULSE(パルス)”。シルバーやブラックなど全5色を展開する。幾何学的なバランスが視線を惹きつけ、シンプルでありながらも強い印象を残す。無駄を削ぎ落としたミニマルデザインに、現代的なエッジを加えた1本である。なお、販売価格は2万3100円から。

MOTION■Ref.7613272662246。SS(39mm径)。3気圧防水。クォーツ。3万6300円
Calvin Klein (カルバン・クライン)
モーション
“MOTION(モーション)”は、多角形のベゼルとブレスレットが一体となったデザインが印象的な1本。文字盤には、グリーンとネイビーを採用した2色、さらにオールブラックカラーも揃う。光を受ける角度によって立体的に表情を変え、手元に存在感を与える。洗練されたフォルムなため、ビジネスシーンでも活躍してくれることだろう。こちらのモデルの販売価格は、3万6300円からとなる。

三つ目に紹介する“LINKED(リンクト)”はホワイトやブラックの文字盤にシルバーのブレスレットを組み合わせたモデルなど全4色展開だ。中央に施されたメッシュパターンの文字盤が特徴となる。光を受けて繊細な陰影を生むことで、立体感のある文字盤構造が楽しめる。販売価格は、2万8600円からだ。

今回のコレクションは、時代を超えて愛される普遍的なデザインと、現代的な造形美を融合させたラインナップとなっており、ブランドのアイデンティティを改めて強く印象づける仕上がりである。なお、売り切れとなっているモデルもあるため要確認だ。

【ブランド別】100万円で買えるおすすめ腕時計

100万円という価格帯は、高級腕時計の世界において非常に重要な位置を占めており、品質・ステータス・資産価値のバランスが最も取れた価格帯として知られています。

100万円前後の腕時計は、単なる時計としての機能を超えて、所有者のライフスタイルやセンスを表現するアイテムとしての価値を持ちます。また、記念日や人生の節目を祝う特別な贈り物としても選ばれることが多く、長年にわたって愛用できる一生ものの時計として高い人気を誇ります。

本記事では、100万円という予算で手に入るおすすめ腕時計や購入時の注意点を紹介します。

100万円の腕時計の魅力

100万円という価格帯の腕時計は、30万円から50万円の時計と比べると、使用される素材の質、ムーブメントの精密さ、ブランドの歴史と技術力がワンランク上のレベルに達しています。一方で、200万円を超える超高級腕時計と比較すると、より多くの人が手に取りやすい価格設定となっており、高級時計の世界への入り口としても最適です。

熟練の職人によって丁寧に組み立てられたムーブメントや、厳選された高級素材、そして長年にわたって培われてきたブランドの美学が結集された逸品が数多く存在します。また、資産価値という観点からも魅力的で、人気モデルや限定品であれば、購入価格を維持したり、場合によっては価値が上昇したりすることもあります。

この記事では、腕時計のレンタルサービス「カリトケ」で展開されている腕時計の中で、100万円で入手できるモデルを紹介していきます。実際に市場で流通しており、購入可能なモデルばかりなので、より実用的な情報としてお役立ていただけるでしょう。

【ブランド別】100万円で買えるおすすめ腕時計
100万円という予算であれば、世界的に名高い高級腕時計ブランドの優秀なモデルを手に入れられます。ここでは、それぞれのブランドが持つ独自の魅力と特におすすめのモデルを紹介します。

ロレックス
ロレックスは腕時計界の王者として、世界中で愛され続けている高級時計ブランドです。100万円の予算であれば、ロレックスの中でも特に洗練されたモデルを手に入れられます。

デイトジャスト 10Pダイヤ(16234G)

デイトジャスト 10Pダイヤ(16234G)は、ロレックスの象徴的なモデルの1つです。高い精度を誇る自動巻きムーブメント「パーペチュアル」を搭載しており、日常的な使用においても抜群の信頼性を発揮します。

最も印象的なのは、10粒のダイヤモンドがちりばめられたブラックの文字盤で、上品で気品に満ちた印象を与えます。ビジネスシーンからフォーマルな場面まで、幅広いシチュエーションで活躍する特別な1本といえるでしょう。

デイトジャスト 10Pダイヤ(16234G)の商品詳細

エクスプローラーⅠ(14270)

エクスプローラーⅠ(14270)は、ロレックスのスポーツモデルの先駆けとして、リリースから現在まで圧倒的な人気を誇る名作です。

39mmのケースサイズは日本人の手首にも馴染みやすく、どのような服装や場面でも違和感なく着用できる汎用性の高さが魅力です。シンプルながらも存在感のあるデザインは、長年にわたって愛用できる普遍的な美しさを持っています。

エクスプローラーⅠ(14270)の商品詳細

ウブロ
ウブロは「異なる素材やアイデアの融合」をコンセプトに、革新的なデザインと技術で腕時計界に新風を吹き込んだブランドです。従来の腕時計の常識を覆すような斬新なアプローチで、多くの時計好きを魅了し続けています。

クラシックフュージョン クラシコ ウルトラシン(515.CM.0140.LR)

クラシックフュージョン クラシコ ウルトラシン(515.CM.0140.LR)は、ウブロの技術力を象徴するモデルの1つです。美しいムーブメントの構造が見えるスケルトンデザインは、時計の機械的な美しさを存分に楽しめます。

「ウルトラシン」の名前が示すとおり、ケースの厚さは驚異的な8.5mmという薄さを実現しており、これほど薄いウブロのモデルは非常に珍しく貴重です。ブラックで統一されたケースとベゼルにはセラミックが使用されており、軽量でありながら高い耐傷性を誇ります。

クラシックフュージョン クラシコ ウルトラシン(515.CM.0140.LR)の商品詳細

ビッグバン エボリューション(301.ST.5020.GR)

ビッグバン エボリューション(301.ST.5020.GR)は、ウブロを代表するモデルです。44mmの大ぶりなケースが生み出す圧倒的な存在感は、着用者に自信と個性を与えてくれます。日付表示機能とクロノグラフを搭載しており、実用性も申し分ありません。

高級感とスポーティーさが絶妙に融合したデザインは、ビジネスシーンからカジュアルな場面まで、幅広いシチュエーションで活躍します。ウブロならではの革新的な素材使いと大胆なデザインが、他の時計とは一味違う存在感を演出してくれるでしょう。

ビッグバン エボリューション(301.ST.5020.GR)の商品詳細

カルティエ
カルティエは「宝石商の王」として知られ、エレガンスと洗練を追求し続けてきたフランスの名門ブランドです。腕時計においても、その美学とクラフツマンシップが存分に発揮されています。

サントス ドゥ カルティエ LM(WSSA0037)

サントス ドゥ カルティエ LM(WSSA0037)は、カルティエの歴史そのものを体現するモデルです。自社製キャリバー1847MCを搭載し、技術的にも最新の水準を誇ります。

グレーのダイヤルとADLC加工が施されたベゼルの組み合わせは、伝統的なエレガンスにモダンなスポーティーさを加えており、現代のライフスタイルに完璧に調和します。カルティエならではの気品と実用性を兼ね備えた、まさに完成度の高い1本です。

サントス ドゥ カルティエ LM(WSSA0037)の商品詳細

シャネル
シャネルは、ファッション界のアイコンとして君臨し続けてきたブランドです。その美学を腕時計の世界にも展開し、独特のデザインセンスと高い技術力で、唯一無二の時計を生み出しています。

J12 38mm エレクトロ(H7122)

J12 38mm エレクトロ(H7122)は、シャネルの時計作りの哲学が凝縮されたモデルです。丸いフォルムが印象的なケースデザインは、シャネルらしい優雅さと現代性をあわせ持っています。日付表示機能を搭載しており、美しさだけでなく実用性も兼ね備えています。

シャネルの象徴ともいえる光沢のあるブラックカラーは、どのような装いにも上品さを加えてくれます。裏蓋のスケルトン仕様により、精密なムーブメントの動きを眺められます。世界限定1255本という希少性の高さも、このモデルの特別感を一層引き立てています。コレクターズアイテムとしての価値も高く、長期的な資産価値も期待できる逸品です。

J12 38mm エレクトロ(H7122)の商品詳細

ブライトリング
ブライトリングは、航空計器の製造で培った高い技術力を活かし、プロフェッショナル向けの精密な腕時計を作り続けているスイスのブランドです。パイロットウォッチの分野では特に高い評価を得ています。

オールドナビタイマー パトルイユドフランス(A11021)

オールドナビタイマー パトルイユドフランス(A11021)は、ブライトリングの技術力と航空への情熱が結実したモデルです。文字盤に縦に3つ並んだインダイアルの配置が特徴的で、クロノグラフ機能を直感的に読み取れます。

オールドナビタイマーシリーズの中でも特別な存在で、わずか1,000本という限定数で販売されました。フランス空軍のアクロバットチーム「パトルイユ・ド・フランス」の名を冠し、文字盤の12時方向に配置された特別なマークが印象的です。航空への憧れと高精度な機械式時計への情熱を持つ人にとって、これ以上ない魅力を持った1本といえるでしょう。

オールドナビタイマー パトルイユドフランス(A11021)の商品詳細

ゼニス
ゼニスは、革新的なムーブメント開発で時計業界をリードし続けてきたスイスの名門ブランドです。特に高振動クロノグラフムーブメント「エルプリメロ」の開発で、時計史に大きな足跡を残しています。

デファイ エルプリメロ21 セラミック(49.9000.9004)

デファイ エルプリメロ21 セラミック(49.9000.9004)は、ゼニスの最新技術が結集された現代的なモデルです。従来のモデルと比較して、よりメカニカルな雰囲気が強調されたデザインが特徴的で、時計の内部構造の美しさを際立たせています。

精密な機械の動きが見える文字盤は、技術への憧れを持つ男性の心を強く惹きつけます。セラミックケースの採用により、軽量性と耐久性を両立し、日常使いにおいても優れた性能を発揮します。

デファイ エルプリメロ21 セラミック(49.9000.9004)の商品詳細

クロノマスター エルプリメロ オリジナル(03.3200.3600)

クロノマスター エルプリメロ オリジナル(03.3200.3600)は、ゼニスの代名詞ともいえる「エルプリメロ」ムーブメントを文字盤から直接観察できる特別なデザインが魅力です。この高振動ムーブメントは、1/10秒という高精度な計測を可能にする技術の結晶です。

シンプルなカラーリングが採用されているため、ビジネススーツからカジュアルウェアまで、あらゆる装いに自然に馴染みます。機械式時計の持つ美しさと実用性を高いレベルで両立した、ゼニスならではの傑作といえるでしょう。

クロノマスター エルプリメロ オリジナル(03.3200.3600)の商品詳細

100万円の腕時計は新品と中古だとどちらがお得?

100万円という予算で腕時計を購入する際、新品にするか中古にするかは重要な判断ポイントです。それぞれにメリットとデメリットがあり、自分の価値観やライフスタイルによって最適な選択は変わってきます。

新品で買う場合
新品購入の最大のメリットは、メーカー保証による安心感と、誰も使用していない新品を所有する満足感です。最新のモデルや改良された機能を手に入れます。メーカー保証により、万が一の故障やトラブルの際も安心してサポートを受けられるため、時計に詳しくない人でも安心して購入できるでしょう。

一方で、新品購入のデメリットとしては、同じ予算でより上位のモデルや希少なモデルを手に入れにくいことが挙げられます。100万円という予算を新品に使った場合、中古であればより高級なブランドや複雑な機能を持つモデルが選択肢に入ることもあります。また、購入直後から価値が下落するリスクもあり、投資という観点では不利な面もあります。

中古で買う場合
中古購入の大きなメリットは、同じ予算でワンランク上のモデルや、通常であれば手の届かない憧れのブランドを手に入れられる可能性があることです。特に状態のよい中古品であれば、新品と遜色ない品質でありながら、価格は大幅に抑えられることが多くあります。また、すでに生産終了したヴィンテージモデルや限定品に出会える機会もあります。

ただし、時計の状態や過去の使用状況を正確に把握することが難しく、購入後に予期しない修理費用が発生する可能性があります。また、保証期間が短い、または保証がない場合が多く、購入後のサポート面で不安が残ることもあります。偽物や改造品のリスクもあるため、信頼できる販売店での購入が重要になります。

カリトケなら幅広い選択肢の中から最適な腕時計を選べる
カリトケは、好きな腕時計を月額制でレンタルできるサービスで、業界最安値水準の特別価格で中古腕時計の販売も行っています。特に人気の高級ブランドの100万円前後のモデルが豊富に揃っており、通常の中古市場では見つけにくい良質な時計を見つけられます。

カリトケの中古腕時計一覧

新品の購入を検討している場合でも、本当に自分に合うかどうかの判断をするために、レンタルで実際に試してみるという使い方も可能です。

カタログやWebサイトの写真だけでは伝わらない、実際の質感や着用感を事前に確認できるため、購入後の後悔を防げるでしょう。特に100万円という高額な買い物では、事前の試着は非常に重要な要素となります。

実際に腕に着けてみることで、時計の重さ、ケースサイズ、ベルトの馴染み具合など、数値では表現できない部分を体験できます。また、日常生活の中で数日間着用することで、その時計が自分のライフスタイルに合うかどうかを判断することも可能です。

カリトケでレンタルできる腕時計一覧

商品が届いたその日から使用でき、返却期限はなく、メンテナンスも不要です。まずは無料で会員登録してみてください。

洗練された魅力的なメトリックにファンキーさが加えられた。

メトリック クロノ レギュレーター。3色展開の各バージョンは限定仕様で、ブリューのファンで人気の高いクロノグラフを、特別なレイアウトにして少し異なる形で提供している。

これらの限定モデルは直径36mm、厚さ10.75mm、ラグからラグまで41.5mmの、通常のメトリック クロノグラフのサイズを踏襲。また3種類すべてのブレスレットはいずれもフルスティールかつサファイアクリスタルを使用し、50mの防水性を備えている。ブリュー メトリックをまったく知らない人は、以前のモデルでお届けした僕のHands-On記事を読んでみて欲しい。この最新トリオの限定モデルはファンキーな70年代の雰囲気はそのままに、レギュレーターのレイアウトへと変更され、センターには分針(同じように)があるが、時間は2時位置の24時間積算計に表示される。
ランニングセコンドは6時位置のインダイヤルで示され、クロノグラフは中央の秒針と10時位置のインダイヤルを使用する。文字盤は時を示すインダイヤルの中心点から広がる、円の配列で仕上げられている。ブリューもWorn & Woundも明るく楽しい色を避けることはほとんどないため、3種類すべてクロノグラフのスタート/ストップボタンやリセットボタンなどに、コントラストとハイライトを採用している。

3つのバージョンは、モスグリーン、スカイブルー、ルビーレッドと説明されているが、前述したようにその完成度は文字盤のベースカラー以上に奥深い。じっくりと見る価値のあるデザインであることは間違いない(特に手首につけているなら特に…今は何時だっけ?)。
過去のブリュー メトリックモデルと同様、これらのWorn & Woundコラボレーションエディションはセイコーインスツルメンツのメカクォーツムーブメント、VK-68を使用しており、価格は3つのバージョンのいずれも549ドル(日本円で約8万1000円)に設定されている。ただし各モデルは200本しか作られない。すでに発売しているため興味のある方はお早めに。

我々の考え
当然といえば当然かもしれないが、3本とも素晴らしいと思う。僕は2021年にレビューしたメトリックを純粋に愛していたが、これらの限定版はメトリックの手軽な魅力にさらに強く傾く。メトリックのような時計は、自国の時計産業から生まれるのを見るのがうれしい種類の時計だ。価格は良心的で着用感もよく、ほかの時計や別の時代への単純な言及よりも興味深いものを提供してくれる。

3本のうち、自分がどれを選ぶかはわからないが、これらはかなり人気がでるだろうと想像している。3つのカラーリングはそれぞれの個性を感じさせながらも、プラン(モットー)を守るという素晴らしい仕事をしている。文字盤のサーキュラーとアシンメトリーに仕上げられたおもしろさ、多様な針、そして無数の色彩のタッチのすべてが、非常に楽しいトリオウォッチの役割を果たしている。
内心ではイエローゴールド(トーン)のケースを持つ、レトロダイヤルのメトリックを心待ちにしているかもしれないが、ブリューとWorn & Woundがこの最新のコラボレーションでもたらすものに反論するのは簡単ではない。70年代のデザインを基盤としながらも、明るく楽しく、時計への情熱に駆られたすえ実行したブリューとWorn & Woundは、時計の楽しさを伝え続けているからだ。

基本情報
ブランド: ブリュー×Worn & Wound(Brew x Worn & Wound)
モデル名: メトリック クロノ レギュレーター(Metric Chrono Regulator)

直径: 36mm
厚さ: 10.75mm
ラグからラグまで: 41.5mm
ケース素材: ステンレススティール
文字盤: モスグリーン、スカイブルー、ルビーレッド
インデックス: アプライド
夜光: あり、BGW9
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: SS製ブレスレット

ムーブメント情報
キャリバー: セイコーインスツルメンツ VK68(メカクォーツ)
機能: 時・分・スモールセコンド、クロノグラフ(12時関計)
直径: 30.8mm
厚さ: 5.1mm

価格 & 発売時期
価格: 549ドル(日本円で約8万1000円)

新しいレガシー・マシーンのスプリットエスケープメントは今後のMB&F。

MB&Fのレガシー・マシーン(LM)の全ラインナップのなかで、色や素材、あるいは複雑機構に関係なく、すべての時計に共通するものを見つけるなら、それは常にフローティング(吊り下げ式)テンプを頼りにすることだ。

新しいLM SE EVO 台北エディションは、MB&F ラボ 台北でのみ、320万台湾ドル(日本円で約1475万円)で販売される。
 その核となる機能は、2011年に登場した初代レガシー・マシン No.1まで遡ることができる。しかし、2017年に初めてリリースされたLM スプリットエスケープメント(LM SE)は、同ブランドのモダンなリリースのなかでも、技術とデザインを洗練させた10年という点で最も象徴的なもののひとつである。今週、LM SEのスポーティな新バージョン、EVO 台北エディションが発表された。基本的には特別仕様の文字盤バリエーションであるが、ここにたどり着くまでの軌跡をたどるいい機会だと思った。
 MB&Fが最初のレガシー・マシンで世界を席巻したのは2011年のことだ。アブラアン-ルイ・ブレゲ(Abraham Louis Breguet)が今日の知識と技術で何を作ろうとしているのか考えたのと同じように、マックス・ブッサー(Max Büsser)氏もその疑問について考えた。“もし私が自分が生まれる前の1867年に生まれていたら? 友人たちの助けを借りて、私はどんな時計を思いついていただろうか?”と彼は自問した。
 その結果、ドーム型クリスタルとフローティングテンプ、そして独自の垂直式パワーリザーブを備えた、LM No.1が誕生したのだ。このモデルはジュネーブ時計グランプリ(GPHG)でふたつの賞を受賞した。前面が印象的なデザインにもかかわらず、背面ははるかにクラシカルなのだ。パッケージ全体がマックス・ブッサー氏だけのビジョンではなく、一緒に作品に取り組んだクロノード社のジャン-フランソワ・モジョン(Jean-François Mojon)とカリ・ヴティライネン(Kari Voutilainen)の天才的な才能の証でもある。

LM No.1 ロングホーン。

LM No.1 ロングホーンに搭載されたムーブメント。
 ここでは簡潔にするために、LM No.2とLM 101(それ自体がおそらくLMデザインの真髄だ)を飛ばして、今週発表されたEVOが、どのようにしてレガシー・マシーン スプリットエスケープメントにつながるのか、その経緯をお届けする。
 マックス・ブッサー氏の周囲には天才がいると以前話したが、このブランドの“友人(Friend、MB&FのF)”のなかで、私が最も魅了されているひとりがいる。2015年、神学者であり北アイルランドの時計職人でもあるスティーブン・マクドネル(Stephen McDonnell)氏に、ブッサー氏はLM パーペチュアルのデザインを依頼した。彼はこの時計にふたつの条件を課していた。それは、本来のやり方とは変えること、それと文字盤中央にはMB&Fの特徴であるフライングテンプを配置することだ。マクドネル氏が直面した問題は、少なくとも伝統的な意味で脱進機を設置するスペースがないことだった。

 

過去のレガシー・マシンのテンプは脱進機とともに時計の前面にあったが、パーペチュアルカレンダーを表示する上では十分なスペースを確保できなかった。そこでマクドネル氏は、世界最長となる天芯を製作し、テンプを時計の前面に残しながら、脱進機の残りの部分(アンカーとガンギ車)を、約12mm下に配置できるようにしたのだ。最初にこの設計が実現したのはLM パーペチュアルだったが、このアイデアは、2017年に発表した簡略化されたLM SEにも採用された。

 

長年にわたり、ブランドはダイヤルカラーやムーブメントの素材を変えて多くのLM SEをリリースしてきた。これはブランド共通のテーマである。ひとつのリリースを逃した場合は、そう遠くない未来に別のリリースのチャンスがあるのが普通だ。しかし、LM SE(およびLMシリーズ全般)最大の大きな変化のひとつは、2020年にLM パーペチュアル EVOとともに、EVOケースが登場したことである。
 EVOラインは理論的にLMの問題点のいくつかを修正したものだ。豪華で彫刻的ではあるが、日常生活には少し不向きに思えるかもしれない。80mの防水性、ねじ込み式リューズ、一体型ラバーストラップ、ノンベゼルデザインを採用しているのがポイントだ。また世界初のモノブロック衝撃吸収システムであるフレックスリング(FlexRing)によりムーブメントが吊り下げられており、日常的な使用(および若干雑に扱っても)に対応できるよう設計されている。そしてオリジナル同様、LM パーペチュアル EVOがリリースされて間もなく、2022年にLM SE EVOが後に続いた。


 それはブランドにとって形とシンプルさに回帰したものだったが、同時にスカイブルーというメインテーマおよびビバリーヒルズ・エディションによって、ドラマチックな色も強調されていた。上の写真にある、UAEの“ゴールデン・ジュビリー”エディションは、その直後に発売された。実際、今回の最新台北モデルは、この1年余りで4本目となるリリースであり、これは2023年の生産本数を500本未満と予測しているブランドとしてはかなり早いペースである。44mm径×17.5mm厚というEVOのバリエーションは、サイズ的にはオリジナルのSEより小さくもなく、装着しやすくもないが、理屈の上ではより耐久性に優れている。


 新しいLM SE EVO 台北エディションは、スプリットエスケープメントのムーブメントが、ブラックの地板とグリーンダイヤルを備えたグレード5チタンケースに収められている。また約72時間のパワーリザーブのために、主ゼンマイの入ったふたつの香箱を備えた手巻きムーブメントはそのままに、面取りされた内角、コート・ド・ジュネーブ、手作業で施されたエングレービングなど、19世紀スタイルの手仕上げも施している。ダイヤルには時・分・日付、パワーリザーブインジケーターがあり、ケース左側のプッシュボタンで日付を調節する。しかしここで重要なのは、MB&Fがスポーティなデザインと、目立つものの以前のモデルほど派手ではない装着しやすいカラーウェイという完璧なバランスを取ったことだと思う。史上2番目のM.A.D.ギャラリーで、ロリ・シェン(Lori Shen)氏とそのチームを称える素晴らしいリリースだ。しかし、20本のうちの1本を手に入れるには、台北まで足を運んで約10万ドルを支払う必要がある。

 ここ12年のLMシリーズの発展を振り返ると、技術と素材の進化により、ブッサー氏とその友人たちは、ますます急速に時計製造の限界を押し広げているように感じる。ただ情報を逃した場合に、”もう1度チャンスを得る”という私の一般的なルールには例外がある。初代LM No.1の製造期間はわずか6年だった。LM SEがブランドの中心的な象徴となる時計として、最後の日を迎えようとしていることは想像に難くない。素晴らしいデザインだが、これまでのMB&Fの歴史を物差しにすると、EVOラインがその若さを保っていなければ少々古くなってきたと思うかもしれない。
 もしそうなら、ブッサー氏と彼のチームは、MB&Fの次のデザインに活かせる才能に事欠くことはないだろう。LM シーケンシャル EVOはMB&Fが誰も可能だとは知らなかったこと、ましてや必要だとは思わなかったことを実現した一例にすぎない。ただこのブランドは常に、LMシリーズと同等の形で、常に複雑さとシンプルなエレガンスのバランスを取ってきた。私は内部の事情は知らないが、自身の論理を基に言うと、年内にMB&Fから何か新しいものが発表されるのではないかと考えている。複雑さ対シンプルさという“作用反作用”のビジョンを持っているので、ブランドがフローティングテンプの核となるデザインを、新しくエレガントかつシンプルな方法で実現したものを出したとしても驚かない。